核廃絶へ「証言の旅」 被爆者ら地球一周の航海

 ◆横浜港からピースボート 広島、長崎の被爆者らが世界各地で核廃絶を訴える「ヒバクシャ地球一周、証言の航海」の客船が12日、横浜港を出港した。非政府組織(NGO)「ピースボート」が2008年から取り組み、10回目の節目を迎えた。被爆者が高齢化する中、被爆2世や若者たちも参加し、核兵器の廃絶を訴え続けることにしている。

 出港に先立ち、横浜港大さん橋国際客船ターミナル(横浜市中区)で参加者の代表が会見し、長崎で被爆した三瀬清一朗さん(82)=長崎市=は「被爆者として72年間苦労を続け、差別を受け続けてきた。原爆の悲惨さを直接伝えたい」と語った。

 被爆2世の山村法恵さん(66)=広島県安芸高田市=は、父親が原爆投下6時間後に広島に向かい被爆した。「父は『この世の地獄を見た』と語っていた。決して繰り返してはならない」と話した。

 被爆者らは、米ニューヨークの国連本部で核兵器禁止条約交渉会議に参加し、核兵器の非人道性を訴える。被爆経験を継承したいと語る「ユース非核特使」の遠藤愛弓さん(22)=横浜市=は「経験者の生の声を聞ける最後の世代。経験された人のメッセージを適切に伝えられるようお手伝いしたい」と力を込めた。

 ベネズエラの交響楽団から、無償で音楽が学べる同国の教育プログラム「エル・システマ」出身の若手ミュージシャン20人も参加。「被爆者が語る体験談を、音楽を通して印象深くすることが私たちの大切な仕事」とサダオ・ムラキ代表は胸の内を明かした。

 ピースボートがチャーターした客船「オーシャンドリーム」(3万5265トン)には日本を中心に中国や台湾、韓国など多国籍の約千人が乗船し、105日間かけて23寄港地を巡る。7月25日に帰港する予定。

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