【新社長インタビュー】〈スチールプランテック・灘信之氏〉海外戦略再構築、ROS5%目指す 「メイド・オブ・ニッポン」で技術発信

――社長就任の抱負からお聞きしたい。

スチールプランテック・灘信之社長

 「日本鋼管時代に総合企画部に配属され、川崎製鉄との統合と2001年のスチールプランテック発足に携わった。スチールプランテックはここ4年で社長が2人交代し、厳しい事業環境下でも黒字を確保しているが、もう一段上の成長戦略を構築することが自分の使命。下を向いていても何もできない。前向きな思考の持てる元気のよい会社にしていきたい」

――足元の需要環境は。

 「中国の生産過剰問題を背景に、世界の製鉄エンジメーカーは苦しい環境にある。この解消には10年程度かかるとみており、当面は厳しい状況が続くだろう。ただ、局地的にはインドやインドネシア、ベトナム、マレーシア、フィリピンなど経済成長を続け、鉄鋼消費量も拡大している国もある。米・トランプ政権の発足による保護主義推進によって自国への投資が熱を帯びている面もある」

 「さらに鉄鋼製品の高級化・高性能化の傾向は継続すると考えている。例えば、自動車用冷延ハイテン(AHSS)は軽量化に必須で、テンションレベラーの需要は高い。直近でも海外で2基目を受注した。製鉄メーカー各社が取り組みを進める複合素材についても、製鉄プラントメーカーが寄与する余地は大きい。設備の老朽化に伴う機能向上への対応も世界的なニーズがある。決して悲観する環境ではないと考えている」

――そのような環境認識の下で、どのような戦略を。

 「16年度の受注額は200億円強とピーク時の4分の1以下となっており、依然厳しい環境にある。今年度は少なくとも300億円強の受注を目指していく。海外受注高の減少が顕著で、この部分をどう増やすかが課題だ。また、将来に向けた成長戦略を描くためにも、少なくともROS5%以上でなければ話にならない。そのためのリバイバルプランを構築していきたい」

――骨子となる戦略は。

 「事業収益の確実な達成を図るために、海外市場戦略を再構築する。スリム化設計や安価調達の実現により競争力を高めたい。また基幹システム(ERP)を一新し、全社一貫システムを構築することでプロジェクトエンジニアリングプロセスやリスクの〝見える化〟を進める。さらにAIやデータサイエンス、ICTといった先進的な『サイバーフィジカル技術』を応用して、設備の信頼性や生産性を高めていきたい」

 「事業の大前提となるのは人材。全社的にさらに一歩進んだ人材育成の仕組みづくりに取り組む。社員全員と面接を行うことで課題を抽出したい。これと並行してワークスタイル改革を進め、生産性を高めることで技術開発などへの余力を持てるようにしたい。全社的な課題については部門を越えた対応が必要で、さまざまな部門の中堅社員を中心とした『クロスファンクショナルチーム』を設置して、横断的な解決策を模索する」

――成長へのビジョンは。

 「製鉄プラントの先進技術と最高のエンジニアリングでお客様に喜んでいただける商品・サービスを提供するという『プランテックマインド』に徹するとともに、社会の良識に従い、誠意を持って行動し、人や自分、社会・環境を大切にするという『プランテックウェイ』を貫くことで成長を果たしたい」

 「今年度は安定化経営へ基盤の補強と事業収益の底上げを図る。18年からの3年間で高収益体質へ転換し、攻めの営業などを実現したい。当社の技術の源泉は日本でお客様と半世紀にわたって培ってきた製鉄プラントエンジニアリング技術にある。ファブリケーションなどは海外で行ってもベースは日本に置き、世界に商品とサービスを供給する『メイド・オブ・ニッポン』を軸に事業を展開する。そのためにもクイック・スピーディーに新たなことにチャレンジし、楽しんで仕事をしてお客様にも喜んでもらえるような組織文化を醸成したい。夢は製鉄所を中心とした街を創ること。日本発の技術ブランドを確立し、世界中で安定的な収益や事業、技術、人材を生み出す集団にしたい」(村上 倫)

プロフィール

 会社生活の半分を製鉄設備の設計やメンテナンスなどに携わってきた〝製鉄エンジのプロ〟。「仲間とともに面白い仕事をすること」をモットーとする。大切にしたい信条は、元ラグビー日本代表監督、宿澤広朗氏の『努力は運を支配する』。家族との団らんや読書、適量の飲酒が息抜きに。

 灘 信之氏(なだ・のぶゆき)79年九州工大機械工学第二学科卒業、日本鋼管(現JFEスチール)入社、2004年JFEスチール西日本製鉄所(倉敷地区)設備部長、06年本社経営企画部設備計画室長、09年東日本製鉄所企画部長、11年常務執行役員、14年専務執行役員、17年4月スチールプランテック社長就任。57年1月15日生まれ、60歳。

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