ヤンキース再建計画に脆さ 我慢の年を印象付ける序盤戦

新たなダイナスティに向けての第一歩になるはずだった――。シーズンが始まる前にヤンキースを包んでいた期待感は、開幕から1週間ほどで消沈してしまった。

今季すでに3本塁打を放っているアーロン・ジャッジ【写真:Getty Images】

サンチェスの負傷で暗い空気に包まれた名門

 新たなダイナスティに向けての第一歩になるはずだった――。シーズンが始まる前にヤンキースを包んでいた期待感は、開幕から1週間ほどで消沈してしまった。タンパ、ボルチモアという敵地6試合を2勝4敗と負け越し、開幕ダッシュに失敗したのが理由ではない。正捕手のゲーリー・サンチェスが8日のオリオールズ戦で右上腕二頭筋を負傷して離脱。10日間の故障者リスト(DL)に入ったことでチームの雰囲気が一転。負傷した試合後、ジラルディ監督は「見たくない出来事だった」と声を沈ませ、ガードナー外野手も「彼の代わりはいないので痛い」と、暗い空気に包まれた。

 サンチェスは精密検査の結果、4週間ほどで復帰できる見込みであることが判明。思ったよりも軽症であったことは幸いだが、左右の主軸コンビとして期待された24歳のグレッグ・バード一塁手も右足痛と体調不良のため、5試合の出場にとどまり20打数1安打と苦しんでいる。

 また、2015年度のドラフト1位で、将来のエース候補の呼び声も高かったジェームス・カプリーリアン投手が右肘痛で離脱し、トミー・ジョン手術を受けることになった。今季中のメジャー昇格が期待されていた右腕の復帰は2019年になる見通しとなった。ここまで5勝4敗という成績以上に、ヤンキースの再建プランが脆く、険しいものになることを予感させた。

 そんな中で好材料もある。今季すでに3本塁打を放っているアーロン・ジャッジ外野手や先日初先発したジョーダン・モンゴメリー投手、サンチェスの代役でメジャー昇格したカイル・ヒガシオカ捕手らマイナーから質の高い若手選手を供給できるようになった。ベースボール・アメリカ紙によると、2017年度のマイナータレントランキングで、ヤンキースは前年度の17位から2位に浮上。タレントの宝庫と呼べるまでマイナーシステムが改善された。

本格的な再建に乗り出したヤンキース、今季「我慢」を強いられるのか

 昨季、ベテラン選手を次々と放出し、マイナーに有望な若手選手を多数揃えることに成功したヤンキース。あとは常勝を義務づけられた宿命を背負いながら、我慢強く若手を育て上げることができるか。これまでも、ジャイアンツのレギュラーに定着したヌニョス内野手やロイヤルズのケネディ投手ら、育てきれずに放出した若手が他球団で活躍したケースは多い。

 今季、先発ローテーションに入っている23歳のルイス・セベリーノ投手にしても、昨季期待外れに終わったため、地元メディアからリリーフ転向を推す声が上がっている。通算22試合の登板だけで先発失格の烙印を押されてしまうところが、名門球団に所属する有望株の辛いところ。2015年に22勝を挙げてナ・リーグのサイ・ヤング賞を獲得したカブスのジェイク・アリエッタ投手は最初の22試合時点で8勝8敗、防御率は4点台後半とパッとしなかった。

 実力のある若手がどのタイミングで才能を開花させるか予測するのは難しい。昨シーズン途中から本格的な再建に乗り出したヤンキースにとって、今年は「我慢」を強いられる年になることが予想される。開幕からの1週間余りで、その印象はさらに強まった。

伊武弘多●文 text by Kouta Ibu

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