「完封」は今やレアな記録!? オリ金子、現役最多タイ21度目快投劇の価値

オリックス・バファローズの金子千尋が、14日の福岡ソフトバンク・ホークス戦で2安打完封。92球という少ない投球数だった。9回完投時の最少投球数は71球。1952年5月11日に阪急の柴田英治が近鉄戦で、1957年3月30日に毎日の植村義信が西鉄戦でそれぞれ達成している。いずれも60年以上前の記録だ。

オリックス・金子千尋【写真:荒川祐史】

14日ソフトB戦で92球の完封勝利、少ない球数での完投は春先に集中!?

 オリックス・バファローズの金子千尋が、14日の福岡ソフトバンク・ホークス戦で2安打完封。92球という少ない投球数だった。

 9回完投時の最少投球数は71球。1952年5月11日に阪急の柴田英治が近鉄戦で、1957年3月30日に毎日の植村義信が西鉄戦でそれぞれ達成している。いずれも60年以上前の記録だ。

 当時は球種も少なく、作戦も複雑ではなかった。打者が早打ちしてくれたこともあって、こういう記録ができた。21世紀に入ってからは2002年4月10日に日本ハムのミラバルが千葉ロッテ戦で記録した80球が最少だ。

 しかし、100球以下での完投は、最近でもそれほど珍しいわけでもない。昨年は100球以下での完投が3度あった。

4月6日 中日・小熊凌祐 DeNA戦 93球 1安打 自責点0
3月30日 楽天・美馬学 ロッテ戦 96球 3安打 自責点0
4月27日 巨人・田口麗斗 阪神戦 99球 7被安打 自責点1

 少ない球数での完投は、春先に集中している。まだ各チームの打線の調子が上がらず、簡単に凡退することが多いからではないか。

 100球以下での完投が、最近でも散見されるのは、そもそも8回時点で100球を超えた先発投手が続投するケースが少なくなっているからだ。球団側が先発投手の肩、肘の負担に気を遣うようになったのだ。8回時点で90球以下の効率的な投球をしている投手は、9回も投げさせてもらえる可能性が高い。

投手の分業化が進み、打者の技術も進化する中で光る金子の投球

 金子千尋はキャリアで21回目の完封。これは、巨人の杉内俊哉とならび、現役最多となった。しかしこの数字は、過去のNPB記録からは遠く及ばない。

 NPB通算完封5傑。%は、先発登板に占める比率(完封引き分けは含まず)。

   投手    完封  先発  %
1、スタルヒン   83  449 18.5%
2、金田正一    82  569  14.4%
3、小山正明    74  583  12.7%
4、別所毅彦    72  483  14.9%
5、鈴木啓示    71  577  12.3%

 これに対し、現役5傑は以下の顔ぶれだ。

1、杉内俊哉(巨) 21 309 6.8%
1、金子千尋(オ) 21 208 10.1%
3、松坂大輔(ソ) 18 190 9.5%
4、岸孝之(楽)  15 222 6.8%
5、成瀬善久(ヤ) 12 224 5.4%
5、吉見一起(中) 12 154 7.8%

 これを見ても、今と昔の野球が大きく異なっていたことがわかる。シーズン最多完封記録は、1942年、野口二郎(大洋)と、1943年藤本英雄(巨人)の「19」だが、今の投手は一生かけてもこの数字に及ばないことが多いのだ。

 投手の先発、救援の分業が進み、打者の技術も進化する中で、「完封」は、今やレアな記録になりつつある。昨年はセで22、パで17。それだけに金子千尋の見事な投球は光っている。今季は、何人が完封を記録するだろうか。

広尾晃●文 text by Koh Hiroo

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