【新日鉄住金エンジニアリング 建築・鋼構造事業部の戦略(上)・建築事業】〈村上信行執行役員に聞く〉産業建築で〝標準化〟推進 非価格競争力を強化、五輪後見据え海外展開も

新日鉄住金エンジニアリング(社長・藤原真一氏)の建築・鋼構造事業部は『鋼×想=力』をキーワードにこの3年で事業部の体質強化に注力。堅調な国内建築需要の追い風もあり事業は軌道に乗っている。事業部長の村上信行執行役員に事業の現状と戦略を聞いた。(村上 倫)

――事業の現状についてお聞きしたい。

新日鉄住金エンジニアリング・村上執行役員

 「当事業部は約3年前から自らの強みである鋼構造技術を生かし競争力強化に取り組んできた。その結果として建築事業分野、鋼構造事業分野とも好調な受注実績を重ね、事業部全体の2016年度受注高は720億円と昨年度同様の高水準を確保した。売上高も600億円程度と高水準で事業の追い風に加え取り組みの成果が着実に現れていると自負している」

――事業の軸としている『鋼×想=力』の意味合いを。

 「『鋼』は我々の卓越した鋼構造や鉄の技術を表し、当社の強みである構造設計力や標準化、工業化の徹底的な追求による価格競争力の強化を示している。『想』はメーカー出身のエンジ会社としてお客様の事業や産業の現場を誰よりも深く鋭く洞察できることを表現しており、お客様と一緒に計画を作り上げていくという非価格競争力の強化を示す。この2つを掛け合わせ相乗効果を生み、最適なソリューションを提案していくことが『力』となる」

――17年度見通しは。

 「追い風は続いており売上高は700億円超と、06年の分社以来最高レベルの高い目標を設定している。受注についても同様に高い水準を確保できる見通しだが既に非常に繁忙で〝兵站が伸びている〟状況にある。無理に実行して品質を落としては意味がないため、650億円とやや抑え気味の目標値とした。ただ、少なくとも前年と同水準にはなりそうだと感じている。受注・売上げともに非常に高いレベルで推移するだろう」

――事業環境の追い風に乗り需要を捕捉すると。

 「17年度は超繁忙が続くと見込んでいるが一方で20年の東京五輪・パラリンピック後を見据えていく必要もある。例えリセッションとなった場合でも収益を確保できる体質強化活動を、繁忙の中でも手を緩めずに確実に進める。新分野の開拓に向け海外事業の強化と新商品開発に注力していく」

――具体的にまず建築事業分野からお聞きしたい。

 「建築事業分野では事業環境の悪化から14年より『再生プラン』を展開し競争力強化活動を推進してきた。昨年度までのファーストステージでは標準化など『鋼』の強化を図ってきた。グリッド設計や耐震制振ブレース、システム建築部材の適用など『新システム建築』の推進によるコストダウンや短納期化によって、特に標準化に適した3階建て以上、1万坪以上の大型物流施設や2階建て、3千~1万坪の中規模物流施設など物流施設で大きな成果に結び付いた。16年度の建築事業の受注高は450億円、売上高は400億円で過半が『新システム建築』分野となったが、17年度は4分の3近くとなるだろう」

 「17年度はその成果であるコスト競争力を基軸にセカンドステージとして『想』を強化する。工場などの産業建築分野ではプロジェクトごとに一品一様の要素が強く標準化に馴染みにくいことから、ファーストステージの成果を十分に反映させることができなかった。これを踏まえ産業建築用の標準化のあり方を再検討し、この分野でも標準化を徹底的に追求する。これまで鉄鋼メーカー出自のエンジ企業としてお客様目線のエンジニアリング提案のノウハウを蓄積してきたが、組織として共有されにくい面もあった。まずは提案メニューの標準化と水平展開によりノウハウを〝組織知〟として蓄積させる。コスト競争力とお客様目線の非価格競争提案のシナジーによる最適ソリューションの提供を図りたい」

――建築事業における20年以降に向けた戦略は。

 「海外では日本企業の進出に対応するなど東南アジアの物流施設や工場を中心とした需要への対応を強化していく。また、国内では関西圏を中心に中規模オフィスビルの建て替え需要が高まっている。特にZEB(ネットゼロエネルギービル)への取り組みに注力したい。その大前提となるのはBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)だ。各地域で適用案件を1つずつ指定し、トップランナー方式で取り組む。設計・施工の生産性向上におけるキラーツールとして適用案件を拡大させていく。『鋼×想=力』を磨き続けることでターゲット分野での存在感ある建築プレーヤーを目指したい」

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