【2016年の品種別輸出(上)】ホット、印向け6割減 方向性電磁、イランへ6年ぶり

財務省の貿易統計や日本鉄鋼連盟の発表をもとに2016年の品種別鉄鋼輸出入状況をまとめたところ、経済制裁が解除されたイラン向けには15年に「復活」したブリキに続き熱延コイルや自動車用冷延でサンプル出荷がなされたほか、方向性電磁鋼板も6年ぶりに輸出された。(カッコ内は前年比)

銑鉄・半製品

 銑鉄輸出は1万8千トン(67・3%減)と、上工程の生産余力がない状況を反映しごく微量にとどまった。このうち韓国向けが6千トン、タイ向けが5千トン、インドネシア向けが5千トンだった。

 半製品輸出は452万トン(5・4%減、うち合金鋼が28万5千トン)となり、3年連続の減少となった。高炉大手のスラブ輸出余力が限られていたことや、セーフガード(SG)の発動で電炉メーカーのベトナム向けビレット輸出が落ち込んだことが表れた。

 うち韓国向け半製品は164万5千トン(4・3%増、うち11万6千トンが合金鋼)と、東国製鋼による厚板用スラブの買い付けが回復し若干の増加となった。このうちJFEスチール西日本製鉄所倉敷地区からの普通鋼スラブは99万1千トンとほぼ前年並みだったが、前年は皆無だった福山地区からが12万6千トンと増えた。

 このほかの対韓スラブは、新日鉄住金名古屋製鉄所からが2万4千トン、日鉄住金鋼鉄和歌山からが1万1千トン、君津と鹿島製鉄所からが各2千トンだった。

 台湾向け半製品は125万6千トン(19・4%減、うち合金鋼が6千トン)。日鉄住金鋼鉄和歌山によるスラブ輸出が年間契約量の見直しで2割減の112万5千トンとなったのが減少の主因だが、17年は120万トンペースが維持されるため落ち込みは続かない見通し。

 タイ向け半製品は77万トン(2・4倍、うち5万6千トンが合金鋼)と劇的に増えた。このうち普通鋼スラブはJFE福山からが25万トン、JFE倉敷からが19万5千トンで、JFE西日本全体では前年から2・1倍に増えた。新日鉄住金系では、前年に実績のなかった和歌山からが19万3千トン、名古屋製鉄所からは4千トンで、総計では2・5倍に伸びた。

 タイではサハビリヤ・スチール・インダストリーズ(SSI)が15年9月に英国の高炉を休止し、以降は熱延コイルや厚板用のスラブを外部から輸入している。SSIと提携関係にあるJFEや、タイ向けではLPNプレートミルへスラブを輸出してきた新日鉄住金も一定の引き合いを引き受け供給した。ただ17年は生産余力や価格面の問題から減る可能性が高い。

 米国向け半製品は39万7千トン(15・8%減、うち9千トンが合金鋼)。カリフォルニア・スチール・インダストリーズ(CSI)へ母材を供給するJFE西日本からのスラブは15・7%減の31万6千トン。

 このほか普通鋼スラブの輸出では、JFE倉敷からフォルモサ・ハティン・スチール(FHS)の熱延ミルがあるベトナムへ3万3千トンが輸出されたほか、マレーシアへは和歌山から2万6千トン、名古屋から1万5千トン、インドネシアへは和歌山から9万2千トン、トルコへは和歌山から2万トンの輸出が見られた。トルコ向けスラブは、福山から輸出された3年ぶり。加古川からは中国へ3千トン、ベトナムへ2千トン、韓国へ500トン輸出された。

 スラブ、ビレットなど合算した他の半製品輸出先は以下の通り。

 ▽ベトナム=20万4千トン▽インドネシア=12万1千トン(うち合金鋼が1万9千トン)▽中国=8万5千トン(うち合金鋼が4万8千トン)▽マレーシア=4万4千トン(うち3千トンが合金鋼)▽フィリピン=2万4千トン▽トルコ=2万トン▽インド=1万4千トン(うち合金鋼が8千トン)▽英国=1千トン▽オランダ=1千トン

鋼板

 鋼板輸出では、熱延広幅帯鋼が1292万4千トン(0・6%減)となり、過去最高だった前年からわずかに減少した。

 うち韓国向けホットは250万7千トン(14・6%増)となり、3年ぶりに増加。現代製鉄・唐津製鉄所の第1高炉が不調だったため、現地リローラーが日本からの調達を増やした。

 新日鉄住金系のNS―サイアム・ユナイテッド・スチール(SUS)やJFE系のタイ・コールド・ロールドスチールシート(TCR)といった冷延事業があるタイ向けは182万3千トン(9・5%増)だった。

 中国向けは100万8千トン(16・5%増)と3年ぶりに増加し、初めて100万トン台に達した。自動車向けの需要増で、宝鋼新日鉄自動車鋼板有限公司(BNA)や広州JFE鋼板への原板供給が増えているようだ。

 その他のホット輸出先は以下の通り。アンチダンピング(反不当廉売=AD)など通商措置の影響でインド向けは前年比56%減と大幅に減った。レバノンやマリへは統計がさかのぼれる1988年以降で初の輸出が見られた。

 <東アジア・東南アジア・オセアニア>

 ▽ベトナム=117万8千トン▽インドネシア=60万9千トン▽マレーシア=45万8千トン▽台湾=38万3千トン▽フィリピン=3万5千トン▽シンガポール=2万トン▽ミャンマー=2万トン▽香港=1万トン▽豪州=6千トン

 <南アジア・中東>

 ▽バングラデシュ=74万9千トン▽インド=54万8千トン▽パキスタン=46万9千トン▽サウジアラビア=39万トン▽アラブ首長国連邦(UAE)=13万9千トン▽クウェート=1万6千トン▽レバノン=1万1千トン▽ネパール=5千トン▽カタール=5千トン▽オマーン=3千トン▽イラン=500トン

 <米州>

 ▽メキシコ=55万7千トン▽コロンビア=25万1千トン▽米国=11万8千トン▽エクアドル=11万トン▽チリ=9万9千トン▽ペルー=9万8千トン▽エルサルバドル=8万4千トン▽グアテマラ=6万7千トン▽コスタリカ=6万3千トン▽ニカラグア=4万トン▽ホンジュラス=1万7千トン▽ボリビア=4千トン▽ブラジル=2千トン▽カナダ=1千トン

 <アフリカ・欧州>

 ▽ケニア=27万トン▽ナイジェリア=18万トン▽タンザニア=12万6千トン▽南アフリカ共和国=12万2千トン▽トルコ=11万トン▽エジプト=10万4千トン▽ウガンダ=8万トン▽モザンビーク=1万1千トン▽イタリア=9千トン▽ガーナ=3千トン▽マリ=3千トン▽ドイツ=1千トン▽トーゴ=700トン▽セネガル=600トン▽ザンビア=600トン▽ブルキナファソ=200トン

 冷延広幅帯鋼の輸出は264万6千トン(0・2%減)となり、微減ながら6年連続で減少。3年連続で300万トンを割った。

 主な向け先では、タイが52万7千トン(12・0%減)、中国が48万5千トン(13・1%減)だった。

 このほかの冷延輸出先は以下の通り。経済制裁が解除されたイランへはごく微量ながら4年ぶりの輸出が見られた。自動車向けのサンプル品と見られる。

 ▽インドネシア=30万2千トン▽マレーシア=29万トン▽ベトナム=20万6千トン▽メキシコ=20万トン▽コロンビア=9万4千トン▽インド=8万トン▽台湾=7万8千トン▽韓国=7万2千トン▽グアテマラ=6万5千トン▽シンガポール=6万3千トン▽フィリピン=4万トン▽エチオピア=2万4千トン▽香港=1万8千トン▽パキスタン=1万7千トン▽バングラデシュ=1万7千トン▽ケニア= 1万4千トン▽トーゴ=1万3千トン▽ジブチ=1万トン▽ペルー=8千トン▽エルサルバドル=7千トン▽UAE=6千トン▽米国=5千トン▽豪州=5千トン▽エクアドル=4千トン▽カンボジア=3千トン▽ブラジル=3千トン▽チリ=2千トン▽南アフリカ共和国=2千トン▽コスタリカ=1千トン▽サウジアラビア=600トン▽トルコ=500トン▽イラン=8トン

 これら冷延のうち、ブリキ原板のローモ輸出は79万6千トン(9・6%減)となり、2年連続で100万トンを割った。

 広州太平洋馬口鉄(PATIN)や福建中日達金属、海南海宇錫板工業がある中国向けは28万トン(20・0%減)だった。

 マレーシアのペルスティマ向けは16万1千トン(37・6%増)、ペルスティマ・ベトナム向けは7万3千トン(17・7%増)だった。

 インドネシアのラティヌサ向けは11万トン(1・9%増)だった。

 サイアム・ティンプレート(STP)やタイ・ティンプレート(TTP)があるタイ向けは9万6千トン(45・5%減)だった。NS―SUSによるローモの現地生産を活用している新日鉄住金からの輸出は皆無だった。

 コロンビアのオラサ(HOLASA)向けは2万1千トン(10・5%増)だった。

 このほか韓国が4万1千トン(78・2%増)、台湾が8千トン(60%増)。香港が2千トン、トルコが500トン、インドが400トンだった。オハイオ・コーティング(OCC)がある米国向けと、シディクソンズ・ティンプレートがあるパキスタン向けは皆無だった。

 冷延のうち、電磁鋼板(磁束密度を50ヘルツで1・5テスラにした際の鉄損が鋼板1キログラムにつき16ワット以下であるものに限る)に分類されるものは、22万トン(9・1%減)だった。

 うち中国向けが9万1千トン(5・2%減)、タイが5万2千トン(14・8%減)、メキシコが5万2千トン(10・6%増)。このほかマレーシアが1万1千トン、ベトナムが1万トン、台湾、香港、シンガポール、フィリピン、インドが各1千トンだった。

 亜鉛めっき鋼板輸出は295万トン(6・5%減)となり、6年連続で減少。新日鉄住金やJFEが海外現地での生産を増やしていることを反映し、300万トンの大台を割った。

 主な向け先では、中国が59万9千トン(6・6%減)、タイが54万5千トン(20・6%減)。かつて現代自動車向けで大口相手国だった韓国は6万9千トン(29・5%減)と、台湾の13万8千トン、米国の8万8千トンを下回っている。

 電気亜鉛めっき鋼板(EG、合金鋼を含む)輸出は101万3千トン(0・5%減)となり、6年連続で減少した。主な向け先は以下の通り。

 ▽中国=37万4千トン▽香港=12万3千トン▽ベトナム=9万1千トン▽タイ=8万4千トン▽インドネシア=6万トン▽台湾=4万8千トン▽フィリピン=4万1千トン▽インド=3万4千トン▽シンガポール=3万4千トン▽米国=3万2千トン▽マレーシア=2万3千トン▽メキシコ=2万1千トン▽バングラデシュ=2万トン▽サウジアラビア=8千トン▽ポルトガル=4千トン▽豪州=4千トン▽スリランカ=3千トン▽ニュージーランド=3千トン▽韓国=1千トン▽パキスタン=1千トン▽UAE=1千トン▽ドイツ=1千トン

 缶用鋼板輸出(前述のローモ除く)では、ブリキが65万5千トン(3・4%増)となり、2年連続で60万トン台に乗せた。ティンフリー・スチール(TFS)は29万8千トン(19・5%増)と、直近では2000年の37万1千トン以来となる高い水準だった。

 ブリキの主な向け先は以下の通り。16年はフィリピンがメキシコを抜き最大相手国だった。

 ▽フィリピン=11万トン▽メキシコ=10万7千トン▽サウジアラビア=7万9千トン▽豪州=4万3千トン▽ブラジル=2万6千トン▽インド=2万3千トン▽UAE=2万3千トン▽ペルー=2万2千トン▽インドネシア=2万2千トン▽バングラデシュ=1万7千トン▽タイ=1万6千トン▽イラン=1万6千トン▽台湾=1万5千トン▽トルコ=1万5千トン▽南アフリカ共和国=1万5千トン▽ニュージーランド=1万3千トン▽シンガポール=9千トン▽コスタリカ=8千トン▽韓国=7千トン▽ベトナム=7千トン▽イスラエル=7千トン▽ヨルダン=7千トン▽デンマーク=7千トン▽オマーン=6千トン▽マレーシア=5千トン▽エジプト=5千トン▽ベルギー=4千トン▽チリ=4千トン▽イエメン=3千トン▽フランス=3千トン▽中国=2千トン▽ブルガリア=2千トン▽ケニア=2千トン▽ロシア=1千トン▽ナイジェリア=1千トン▽米国=700トン▽エクアドル=700トン▽ドミニカ共和国=600トン▽チュニジア=500トン▽タンザニア=500トン▽ザンビア=300トン▽ジンバブエ=200トン

 TFSの主な向け先は以下の通り。

 ▽メキシコ=10万トン▽フィリピン=3万7千トン▽ブラジル=2万4千トン▽インド=1万3千トン▽タイ=1万2千トン▽エクアドル=1万2千トン▽ケニア=1万1千トン▽インドネシア=1万トン▽UAE=7千トン▽コスタリカ=7千トン▽ナイジェリア=7千トン▽台湾=6千トン▽パキスタン=6千トン▽ペルー=6千トン▽中国=3千トン▽イラン=3千トン▽フランス=3千トン▽イタリア=3千トン▽タンザニア=3千トン▽ベトナム=2千トン▽サウジアラビア=2千トン▽英国=2千トン▽ベルギー=2千トン▽トルコ=2千トン▽ブルガリア=1千トン▽エジプト=1千トン▽南アフリカ共和国=1千トン▽ドイツ=900トン▽ヨルダン=800トン▽エチオピア=700トン▽米国=500トン▽コンゴ民主共和国=200トン

 電気鋼板(電磁鋼板)輸出は69万3千トン(5・8%減)となり2年連続の前年割れとなった。70万トン割れは14年ぶり。

 主な向け先では、中国が17万1千トン(10・6%減)、タイが7万4千トン(9・4%減)だった。

 このうち方向性電磁鋼板(GO)は35万7千トン(6・3%減)だった。前年に需給がタイトだった反動で顧客が過剰に発注し、在庫調整で引き合いが弱かった。

 主な向け先は以下の通り。

 ▽インド=5万4千トン▽ベルギー=5万1千トン▽メキシコ=4万7千トン▽トルコ=2万8千トン▽シンガポール=2万4千トン▽米国=1万9千トン▽インドネシア=1万6千トン▽韓国=1万5千トン▽オランダ=1万4千トン▽中国=1万3千トン▽ベトナム=1万1千トン▽台湾=1万トン▽カナダ=9千トン▽タイ=7千トン▽豪州=7千トン▽UAE=5千トン▽サウジアラビア=4千トン▽ドイツ=4千トン▽マレーシア=3千トン▽オーストリア=3千トン▽バングラデシュ=2千トン▽イラン=2千トン▽クウェート=2千トン▽コロンビア=2千トン▽パキスタン=2千トン▽スペイン=1千トン▽クロアチア=1千トン▽ニュージーランド=1千トン▽フィリピン=600トン▽イタリア=500トン▽ポルトガル=400トン

 無方向性電磁鋼板(NO)の輸出は33万6千トン(5・1%減)となり、2年連続で40万トンに届かなかった。

 主な向け先は以下の通り。中国向けはエアコン生産の回復で増加した。

 ▽中国=15万8千トン▽タイ=6万8千トン▽マレーシア=3万3千トン▽ベトナム=1万4千トン▽香港=1万2千トン▽メキシコ=1万2千トン▽台湾=1万1千トン▽インドネシア=8千トン▽韓国=5千トン▽シンガポール=5千トン▽フィリピン=4千トン▽インド=3千トン▽ドイツ=2千トン▽バングラデシュ=1千トン▽オランダ=500トン▽ベルギー=500トン▽米国=500トン

 厚板輸出は287万トン(6・9%減)となり、2年ぶりに300万トンを割った。17年は新日鉄住金・大分製鉄所の厚板ミル火災や需要低迷でさらに200万トン際にまで減少しそうだ。

 うち中国向けは85万6千トン(1・5%減)、韓国向けは84万6千トン(8・5%増)となり、2年連続で中国が厚板輸出の最大相手国となった。

 他の主な厚板輸出先は以下の通り。

 ▽フィリピン=24万1千トン▽ベトナム=21万4千トン▽シンガポール=17万2千トン▽メキシコ=7万4千トン▽タイ=6万3千トン▽台湾=5万9千トン▽UAE=5万7千トン▽マレーシア=4万7千トン▽サウジアラビア=3万8千トン▽ミャンマー=3万5千トン▽インドネシア=3万3千トン▽インド=2万6千トン▽クウェート=2万4千トン▽ドイツ=2万4千トン▽米国=1万8千トン▽エクアドル=1万6千トン▽チリ=1万6千トン▽ニュージーランド=1万1千トン▽バングラデシュ=1万トン▽イラク=9千トン▽香港=7千トン▽バーレーン=7千トン▽カタール=5千トン▽コロンビア=3千トン▽ニカラグア=2千トン▽エルサルバドル=1千トン▽ペルー=1千トン▽パナマ=600トン▽スリランカ=300トン▽トルクメニスタン=200トン

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