【新社長インタビュー】〈虹技・山本幹雄氏〉高付加価値化で収益向上 中国・天津好調、江蘇省に新工場も

――2月16日に前社長の堀田一之氏が急逝され、急遽、社長交代となったが。

 「実は昨年5月の連休明けに堀田社長から〝次の社長は山本さんでお願いします〟と要請されていた。」

虹技・山本幹雄社長

――社長就任を決意した経緯は。

 「創業家である堀田家出身の社長が5代続き、昨年創業100周年を迎えた企業のトップに私は相応しくないと固辞した。ただ〝決めました。運命です〟と堀田社長に説得され、引き受けることにした。承諾してからも堀田社長に〝最近、よく眠れません〟と言うと〝私も10年ぐらいあまり眠っていません〟と言われ、返す言葉がなかった。堀田社長にとっても社長交代は英断だったのだと思う。今は挨拶回り中心で実感のあるなしにかかわらず社長業をこなしている。堀田社長や社員からの期待に少しでも応えていきたい」

――社長に就任して、まずされた事は。

 「2月17日の取締役会で社長に就任し、18日は土曜日だったが、管理職と現場の班長クラス以上の社員には集まってもらった。そこで役員など経営の新たな体制は固まった。〝動揺することなく経営理念に基づき200年、300年と続く会社にしていこう〟と伝えた」

――新社長としてどういった会社を目指していくのか。

 「当社は製造業なので、現場のもの造りをしっかりしないといけない。そのためには現場で働いている人の意識が何より大事で、働き甲斐のある企業にしていく必要がある。そして安倍総理のスローガンではないが〝全員総活躍企業〟を目指していく」

 「私は姫路出身だが、播州という地域に誇りを持っている。姫路には鉄鋼メーカーをはじめ世界的に活躍する企業がたくさんある。当社は小粒だが〝姫路に虹技あり〟と言われるようになりたい」

――業績の話を伺いたい。今期の連結通期見通しは、売上高198億円、経常利益17億円としているが。

 「通期見通しは今期を初年度とする3カ年の中期計画通りで、ほぼ達成できそうだ。最終年度となる19年3月期まで計画通り進むよう尽力していきたい」

――中国、インドネシアに現地法人を持っているが、海外事業については。

 「自動車用金型鋳物を生産する中国・天津の現地法人の工場は、フル生産が続き好調だ。連結決算では、国内事業と変わらない経常利益を計上しており、当社の収益の柱になっている。この天津を補完し、中国南部のユーザーをカバーするため、江蘇省南通市に中国では2つ目となる現地法人を設立した。今夏には工場の開業式を行う予定だ」

――一方、国内事業については。

 「売上高の80%を占める国内鋳物事業は、マーケットの伸びが期待できず、生き残っていくことが何より大切だ。そのためにはトップシェアを持つ製品については、より付加価値を付けることで、収益向上を図っていく」

――シェアの低い製品の戦略は。

 「当社は産業機械向けの鋳物のシェアが低いが、逆に言えば伸び代があるということだ。こういった分野にはフルモード鋳造法で、伸ばしていきたい。フルモードは、発泡スチロールの模型を砂型に埋め溶湯を流し込む鋳造法で、木型による鋳造法に比べ少量で短納期の生産に向いている」(橋川 渉)

プロフィール

 自他ともに認める〝祭男〟。「地域の歴史と伝統に対する住民の情熱を感じたい」と全国で20ほどの祭りを観てきた。その中でも一番は、地元、的形湊神社の秋季例大祭。「地域の団結力が素晴らしい」と自身も毎年会社を休み2日間参加している。座右の銘は〝人間万事塞翁が馬〟。「不遇の時も努力を怠らず、恵まれている時も傲慢にならず」と実直な性格だ。

 山本 幹雄氏(やまもと・みきお)82年(昭57)甲南大学法学部卒、虹技入社、11年執行役員東京支社長、15年取締役大型鋳物事業部長および風土改革担当、16年鋳物部門統括および風土改革担当。17年2月社長就任。59年(昭34)7月生まれ。兵庫県姫路市出身。

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