<隠れた名盤> 森昌子『みぞれ酒』 演歌の大作曲家、岡千秋との初タッグ

森昌子『みぞれ酒』

 デビュー45周年記念の第2弾。第1弾は加藤登紀子プロデュースにより『難破船』や『百万本のバラ』などメロディアスな新境地に挑んだが、今回は、演歌の大作曲家、岡千秋との初タッグ。レコード会社移籍後の自己最高のシングル売り上げを更新し続けている。

 表題曲は、愛を失って酒にすがるマイナー調の演歌で、森昌子版『悲しい酒』といったところか。別れを悔やみつつも相手への恨みを感じさせないのは、森の繊細な歌声に拠る所も大きいだろう。

 カップリングの『そんな恋酒場』は、一度きりの人生を楽しもうという“オバちゃんパワー”全開の歌謡ポップス。酒をテーマに、深い悲しみも、底抜けな陽気も表現したこの2曲自体、彼女の生き様が反映されているようで感慨深い。

 ここ数年は、阿木燿子・宇崎竜童コンビの歌謡ロックや、映画音楽のカバーなど、精力的な作品が多い彼女。一連の森昌子作品を楽しめば、多少の不運に遭ってもやがて来る幸運を信じられるはず。

(キング・1204円+税)=臼井孝

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