「南極料理人」が語る「極意」 横浜で講演会

 「南極料理人」として昭和基地で腕を振るった篠原洋一さん(55)による講演会が6日、横浜市中区の日本郵船歴史博物館で開かれた。篠原さんは極地での体験や食事提供の工夫などを軽妙な語り口で紹介。約30人が「極意」に耳を傾けた。

 篠原さんは料亭などで経験を積んだ後、第33次(1991〜93年)、第50次(2008〜10年)南極地域観測隊の越冬調理を担当。客船「飛鳥」「飛鳥2」でも料理人を務めた経歴を持ち、現在は市内で飲食店を経営する。

 南極では、毎日が工夫の連続だったという。レシピは週単位で、前の週の隊員からのリクエストで決定した。「吉野家の牛丼が食べたいなあ」という隊員のために食材を工夫して似た味の牛丼を提供したり、氷山に溝を掘って「流しそうめん」イベントを開催したりしたこともあった。月見やクリスマスの時期に合わせ、フグやスッポンなど豪華料理を出すことも。

 野外で活動する時の携帯食として隊員から「メニューが豊富で、すぐできて、栄養バランスも良くて軽くて、ごみが出なくてプロの味の食べ物を」とリクエストされ、悩んだ末に128種類のフリーズドライ食品をこしらえたエピソードを披露。「大喜びされ、いい思い出」と振り返った。

 篠原さんは最後に、極意として「昭和基地という閉鎖空間では、食事は隊員の精神状態を大きく左右する。メニューのバリエーションを豊富にし、隊員からのリクエストや特別な料理を出す日を大切にすることで、チーム全体で任務をこなす空気ができる」と熱っぽく語った。

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