【現場を歩く】〈種子島宇宙センター〉ロケット発射担う鋼構造群 整備組立棟、鉄骨造地上15階建て

 種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)は種子島の東南端に位置し、東京ドーム207個分に相当する総面積970万平方メートルを誇る国内最大のロケット発射場だ。JAXA(宇宙航空研究開発機構)が運営し、組み立てから整備、点検、打ち上げ、追跡まで人工衛星の発射に関連する作業を一手に担う。現地で中心的な役割を果たす大型ロケット発射場を訪ね、鉄骨造をはじめ日本の宇宙開発を支える構造物を見学した。(中野 裕介)

展望台から望む大型ロケット発射場。「世界一美しいロケット基地」ともいわれる
圧倒的な存在感の整備組立棟。総重量は約5600トンを誇る(JAXA提供)
整備組立棟は高・中・低層の3棟で構成する
整備組立棟から約500メートル先に立つ2つの射点
地下12メートルに遠隔操作の前線基地を備える発射管制棟

 

H-Ⅱロケットの実物大模型

大型ロケット発射場は敷地内で海に突き出た部分にあり、1991年(平3)に完成。大型ロケットの整備組立棟と移動発射台、第1射点(H―IIA)、第2射点(H―IIB)、大型ロケット発射管制棟などで構成する。

 このうち整備組立棟(Yoshinobu・Vehicle・Assembly・Building、略称・VAB)は、敷地内でも他の建築物に比べ一きわ存在感を放つ。総重量約5600トンの鉄骨造地上15階建てで、高さ81メートル、幅64メートル、奥行き34・5メートルを数える。

 側面から見ると分かりやすいが、VABは高・中・低層の3つの建屋に分けられる。当初の低・中層棟(90年5月竣工)に続き、高層棟を99年6月に増築した。

 構内では、工場から輸送したロケット各段を輸送コンテナから取り出し、大型移動発射台の上にロケットを組み立てる。現在はロケット2機を同時に組立、整備、点検、衛星・フェアリングを取り付けできる。

 ロケットは移動発射台の上で組み立てられた後、約500メートル先に立つ2つの射点のいずれかに向かう。

 第1射点でH―IIAロケット、第2射点ではH―IIBロケットを打ち上げる。ともに鉄骨造で、至近の避雷鉄塔は約75メートルの高さに上る。

 発射に際しては、VABの向かいにあり、同じく射点から500メートル離れた発射管制棟が前線基地となる。打ち上げまでに必要な作業を指揮、監督を遠隔操作し、総合指令棟に必要な情報を伝える。上から望むと六角形をあしらった造りが特徴で、職員は地下12メートルに設ける発射管制室で一連の対応に当たる。

 JAXAによると、種子島宇宙センターでは、6月1日にもH―IIAロケット34号で準天頂衛星「みちびき2号機」の打ち上げを予定しているという。これまでにH―IIAロケット33基、H―IIBロケット6基で実績を上げる一方、20年度に試験機1号機を打ち上げる計画で、次世代大型ロケット「H3」の開発が進む。今後も日本の宇宙開発で人工衛星の打ち上げを主導する最前線から目が離せない。

ロケットガレージ&宇宙科学技術館/相次ぎリニューアル

 種子島宇宙センターでは、宇宙開発の一端を体感できる施設が相次ぎリニューアルしている。

 大型ロケット発射場を入って間もない、整備組立棟の裏手にたたずむ1棟の建屋。今年3月にこれまでの大崎第一事務所から「ロケットガレージ」に名称変更した。構内ではH―IIロケット7号機を中心に実物の部品を多数展示しており、ロケットを発射点に移送する運搬台車「ドーリー」の車輪などに触れられる。JAXAの職員が専任のガイドで同行する施設案内ツアーの見学場所であり、幅広い世代に人気がある。

約20年ぶりに改修した宇宙科学技術館
「ロケットガレージ」では実物の部品を間近に体感できる

 大型ロケット発射場から車で10分足らず南に立地し、1979年8月に開館した宇宙科学技術館も約20年ぶりの改修を終え、新たな姿で3月下旬にグランドオープンした。

 大型の壁面スクリーンや床面に映し出す映像、音やスモークにより、発射場の間近で打ち上げを観賞しているような臨場感に満ちた「リフトオフシアター」や、「きぼう」の日本実験棟に準じた実物大模型によって、実際の船内にいるような無重力状態の写真を撮影できるスポットなどを備えている。

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