金属行人(5月12日付)

 鉄鋼市場は政治情勢にも少なからず左右される。中国では「反腐敗運動」が吹き荒れた2015年に役人のサボタージュが公共事業の遅れを招き、タイでは14年のクーデターで予算の執行が滞った。いずれも需要低迷と市況下落の一因になっている▼同じような状況に、直近は韓国が陥っていた。朴槿恵(パク・クネ)大統領が3月に失職し、政治空白でここ2カ月は公共投資が止まっていたという。韓国鉄鋼メーカー幹部は10日に文在寅(ムン・ジェイン)氏が大統領に就任し、政局が収拾したことで「7月以降、建材需要が盛り上がる」と期待する▼一方、厚板市場も政策次第の要素がある。文大統領は経済政策で雇用対策を掲げており、気になるのは公的資金が注入されている大宇造船海洋をはじめとした造船業への施策。破綻すれば雇用への影響が大きいのは確かだが、政策的な下支えは淘汰されるべき能力の温存になる。歪んだ造船受注が世界の厚板需給にも影響しかねない▼そして北朝鮮情勢にどう対応するのか。米と軍事的な連携を優先するあまり、米との通商では割を食う可能性がある。韓国は米向け輸出の依存度が高く、通商拡大法232条が適用されれば最も打撃を被る国だ。前出幹部はこう指摘する。「自国より米国の大統領、トランプさん次第ですよ」。

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