【九州地区の鉄鋼関連業界・2017年に挑むキーマンに聞く】〈特殊鋼流通〉吉永博全日本特殊鋼流通協会九州支部長、商流は「加工シフト」が加速 需要は低位安定が続く

――特殊鋼流通業界の現状から伺いたい。

吉永博全日本特殊鋼流通協会九州支部長

 「全体的には、北米向けの自動車関連輸出が絶好調なので、構造用鋼、ばね鋼などが順調とされている。一方で、近年の商流は付加価値の高い加工品にシフトする傾向にあり、九州地区でも同様な動きだ。需要の過度な期待は禁物だが、今年度も昨年並みを予想している。取り巻く環境は悪くないと認識している」

――加工へのシフト化は、鋼材流通と同様の流れですね。

 「ウチの場合は一昨年、昨年度と八幡製鉄所関連のライン改修向けで加工品の仕事が増えている。足元では加工(一般鋼材を含む)が6割、素材が4割の比率だ。全国的に言えることだが、素材を在庫して販売する機能だけでは、特殊鋼流通は成り立たない」

――九州の市場規模はどのくらいですか。

 「もともと、マーケットが小さいこともあって、一般鋼みたいに大きなブレはない。どちらかと言うと、低位安定で推移している。需要の70~80%は自動車向けだが、集中購買方式とあって、九州で生産台数が増えても直接の恩恵はない。市場は、細々した産業機械向け需要の積み重ねで成り立っている」

――九州支部の現況は。

 「地場の『正会員6社』、支店や営業所の『支部会員11社』、メーカーの『賛助会員9社』からなり、トータル26社。地場の企業である正会員が少ないため、支部運営は持ち回りで行わざるを得ない。副支部長には、ユアーズスチールの渡邊洋一社長にお願いしている」

――昨年、全特協の組織再編がなされた影響はありますか。

 「支部交流の活性化が狙いで、従来からの8支部体制(東京、東北、北関東、名古屋、静岡、大阪、中国、九州)を堅持する一方で、各支部が3ブロック(東日本、中日本、西日本)に移行されたとあって前向きの再編だ。新体制への移行に伴い、これまでの『支部総会』を見直し、『支部報告会』として実施している」

 「併せて、事務局の業務を、九州支部から三鋼販西日本に業務委託することにした。事務局長のポストは設けていなかったが、今後は会計を担当してもらっている津村春美三鋼販西日本久留米支店次長に、事務局長をお願いすることになる」

――支部活動のトピックスは。

 「ホットな話題としては、『はがねの日』の記念事業として4月23日に、福岡タワー周辺で清掃ボランティアを行った。通算13回目だが、6年前から九州ステンレス流通協会と共催しており、若い家族連れの参加者が増えている。今回は晴天にも恵まれて、過去最高の146人に参加してもらった。地域社会に貢献できる取り組みだけに、さらに輪を広げていきたい」

――映画「たたら侍」の特別試写会も好評でした。

 「映画製作に際し、全特協が支援団体として参画しているため、4月6日に福岡市のキャナルシティ博多のユナイテッド・シネマで実現した。劇団EXILEの青柳翔が主演で、モントリオール世界映画祭(ワールド・コンベンション部門)で最優秀芸術賞を受賞した映画を、封切り前に鑑賞できたため映画好きには好評。会員企業の社員や家族ら約100人で楽しんだ」

――特殊鋼販売技師の有資格者は順調に増えていますね。

 「九州地区での有資格者は累計で400人を突破して順調。特に女性は優秀で、100点満点での合格者が増えている。例年、10月に販売技師の講習・試験を行っているが、今回は初心者向けの講習会『くろがね』を、初めての試みとして福岡県で実施する予定」

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