坂口、鵜久森、そして大松も… ヤクルトは「元パ選手再生工場」になった?

5月9日の広島戦で、ヤクルトの大松尚逸が代打サヨナラ本塁打を打った。最近のヤクルトは、パ・リーグで活躍した選手を獲得して再生するケースが目立つ。

ヤクルト・坂口智隆【写真:編集部】

パ・リーグで活躍した選手を獲得、再生するケースが目立つヤクルト

 5月9日の広島戦で、ヤクルトの大松尚逸が代打サヨナラ本塁打を打った。大松は昨年までロッテに在籍し、一時は5番打者として24本塁打を打ったこともあったが、昨年5月にアキレス腱を断裂してシーズン後にロッテから戦力外通告を受け、キャンプでのテストを経てヤクルトに入団した。

 本人も「1年後にこんな日が来るとは信じられない」と言っていたそうだが、まさに起死回生の一打だった。

 最近のヤクルトは、パ・リーグで活躍した選手を獲得して再生するケースが目立つ。

 その典型が坂口智隆だ。オリックス時代ゴールデングラブ賞4回に輝く好守の外野手だったが、2015年に大幅な年俸減額を拒否して自由契約となり、ヤクルトに入団した。ヤクルトでは中堅手としてたびたび好守を見せるとともに、昨年は1番打者として.295をマーク。リードオフマンとして定着した。近鉄時代を知る32歳のベテランだが、今年も健在だ。

 大引啓次は、オリックスの正遊撃手だったが2013年に糸井嘉男らとの大型トレードで日本ハムに移籍。2015年にFA宣言をしてヤクルトに。今季も守備の要の正遊撃手として活躍している。

 今浪隆博は、日本ハムではユーティリティ内野手として活躍したが、2014年トレードでヤクルトに。元の同僚、大引とのポジション争いでは正位置を獲得することはできなかったが、2016年にはキャリアハイの94試合に出場、今季は1軍出場はまだないが、貴重な戦力になっている。

かなりの確率で”再生”に成功?

 鵜久森淳志は、打撃センスの光る大型外野手。日本ハムでは主に代打として起用されたが、2015年に戦力外通告を受ける。トライアウトを経てヤクルトに入団。2016年はキャリアハイの146打席に立って35安打4本塁打。自身初の満塁本塁打を記録。今季も1軍スタート、4月2日のDeNA戦には代打サヨナラ満塁本塁打を記録。好機にめっぽう強い打者として売り出している。

 投手では、ソフトバンクから2014年シーズン中にトレードで移籍した山中浩史がいる。今では珍しいアンダースロー投手。ソフトバンク時代は登板機会に恵まれなかったが、ヤクルトでは2016年にローテの一角を担い、140イニングを投げた。今季も先発で投げている。

 このほかにも控え捕手として楽天でプレーし、巨人を経由して2015年にヤクルトに来た井野卓、2016年オフに楽天から移籍した外野手の榎本葵などもいる。かつてのロッテの左腕エース、成瀬善久も、ヤクルトで再起を期している。昨年までは、ソフトバンクの先発投手、新垣渚が在籍していた。

 かつて、パ・リーグはセ・リーグのベテラン選手を獲得して主力選手として起用するケースが多かったが、ヤクルトは、パで戦力外になったり、出場機会が減ったりした選手を獲得して、活用している。もちろん、全員が活躍しているわけではないが、かなりの確率で”再生”に成功している。

 交流戦での成績が示す通り、パの選手層は厚い。レギュラーを外れても活躍できる選手はたくさんいるのだ。ヤクルトのフロントはそこに着目しているのだろう。

 ヤクルトの監督でもあった野村克也氏はくすぶっている選手を再生して「野村再生工場」の異名をとったが、ヤクルトも「元パ選手再生工場」と名乗ってもいいかもしれない。

広尾晃●文 text by Koh Hiroo

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