17年度関西建設需要動向、建築・中小物件中心に微増 土木は交通インフラ整備加速

 2017年度の関西の建設需要は、建築に関しては大型物件が少ないが、土木は防災・減災関係の需要が堅調なのに加え、鉄道や高速道路など交通インフラの整備が加速しそうだ。 建築は中小中心

建設の目玉となるヨドバシ梅田タワーの工事現場

 今年度の関西の建築需要については、首都圏での東京オリンピック・パラリンピック関連の工事が本格化するほか、再開発案件が目白押しなため「関西でも需要はあるが、ファブの加工能力の問題や現場管理者などの人手不足から16年度比微増程度にとどまりそう」とみる向きが多い。物件の規模についても、鉄骨重量で2千トン前後の中小ホテルや5千トン程度の物流倉庫が中心となりそうだ。

大型ホテル開業相次ぐ

 大型物件が少ない中、目玉になりそうなのが、ヨドバシカメラの「ヨドバシ梅田タワー」。ヨドバシ梅田北側の駐車場部分約1万7200平方メートルに、地上34階建ての高層ビルを建築する計画だ。鉄骨使用量が3万トン近くになるとみられる。現在は駐車場の路面をはがす段階で、7月には本格的に工事に着工、19年秋に竣工する予定だ。

 またオービックが建築を進めているオービック御堂筋ビルでは鉄骨が1万2千トン程度使われそうだ。オービック御堂筋ビルは25階建てで、そのうち15~25階にはロイヤルパークホテルズが入居。先のヨドバシ梅田タワーの9~34階にもホテルが入り、大阪の中心地での大型ホテルの開業が相次ぐ。インバウンド増加に伴うホテル需給のひっ迫が背景にあるが「大阪では1泊5万円以上で、宴会場のある高級ホテルが特に足らず、来年度以降も引き続き物件が出てきそうだ」とみる向きが多い。

大型物件は来年度

 ホテル以外の大型物件では、日清食品が滋賀県栗東市で新工場を建設している。IoT技術を活用し、自動化と効率化を進める新工場の延べ床面積約11万3千平方メートルで、1万トン程度の鉄骨が使われそうだ。19年12月の完成を目指しており、今夏には一部建方が始まりそうだ。来年度の案件では大阪医療センターの建替え(鉄骨見込量1万トン)、ユニバーサルスタジオジャパン周辺のホテルなどもあり「鉄骨重量で1万トンを超える大型物件は来年度の方が多い」と商社ではみている。

鉄道網の整備

 関西では、25年の万博構想や統合型リゾート(IR)計画といった大型プロジェクトが控えているほか、リニア新幹線の延伸が最大で8年前倒しされる見通しから交通インフラの整備が加速しそうだ。そのため「関西の土木需要は当面、右肩上がりが期待できそう」との声が聞かれる。

 鉄道では、北大阪急行の延伸(延長距離2・5キロ、千里中央~新箕面)は20年度の開業に向け既に着工。事業費は650億円とみられる。また大阪モノレールの延伸(同9キロ、門真市~瓜生堂)は、今年度は測量・基本設計で、19年度に着工し、29年度の開業を目指している。また今のところまだ具体的ではないが、新大阪や関西国際空港とのアクセスを強化するため、なにわ筋線の新設(同10・2キロ、新大阪~JR・南海難波)、西梅田・十三新大阪連絡線の新設(同5・2キロ、西梅田~十三~新大阪)の計画もある。

ミッシングリンク解消

 高速道路網でも、大阪湾周辺のミッシングリンク解消に向け、工事が進められているが、依然未事業化区間が91キロある。大阪湾岸道路西伸部(15キロ)、淀川左岸線延伸部(9キロ)は今年度、具体的に事業着手されそうだ。そのほか防災・減災関係は引き続き堅調に推移しそう。津波や集中豪雨対策の河川の護岸工事や下水道の整備は、毎年1~2工区ずつ工事が進捗しており、今年度も昨年度並みの案件が出てきそうだ。和歌山県では、南海トラフ大地震発生に備え津波対策や防潮堤の建設、また地滑り対策などの工事が出てくる見込みだ。

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