【高炉の業績動向】〈JFEホールディングス・岡田伸一副社長に聞く〉今期「増益要因多い」 前期、海外事業黒字化=国内グループ会社は黒字幅縮小

――前3月期は経常利益847億円。従来予想(700億円)より上振れましたが、実態は在庫評価益など評価性要素が大きい。

JFEホールディングス・岡田副社長

 「JFEスチールの連結経常益405億円から在庫評価益や為替換算差益など一過性要因280億円を除くと125億円。前15年度は実力経常益が1058億円だったので大幅に悪化した。15年度との比較で要因を分析すると、スプレッドが約1千億円(トン当たり3千円強)悪化しており、これが減益要因の大半だ」

――JFEスチールは単独業績が2期連続の経常赤字に。

 「下期にトン2万円程度主原料コストが上昇し、段階的に販売価格への転嫁を進めたが、(値上げ幅と期間の掛け算となる)面積としては追いつかなかった」

――鉄鋼のグループ会社の業績について。

 「国内はほとんどの会社が黒字だった。トータルの黒字額は15年度比で若干減少した。15年度に最も収益貢献したJFE条鋼が、鉄スクラップ価格上昇でスプレッドが縮小して利益幅が減少したのが大きい。物流系、設備系、鋼材加工系、資源系など他のグループ会社はトータルで数十億円の増益となったが、JFE条鋼の減益幅を補えなかった」

――海外の事業会社は?

 「15年度は海外事業トータルで赤字だったが改善し黒字化した。これだけの利益を海外事業で稼いだのは久方ぶりだ」

――印JSWの利益貢献額(15%分の持ち分利益)は約70億円でしたが、その他の案件は。

 「15年に赤字だった米CSI(カリフォルニア・スチール)やインドのJSWスチールが黒字化。中国・宝鋼系との合弁GJSS社も13年からの黒字が継続して好調だ」

 「タイCGLのJSGT社は昨春から単月黒字化が実現し、16年の下期(7~12月)は半期で黒字化した。インドネシアのJSGI社は立ち上げ途上のため黒字化には至っていないが、計画比で順調だ」

――前期の実力経常益125億円を発射台に、今期は業績回復が見込めますか?

 「豪州サイクロンの影響で4~6月の原料炭価格が決まっておらず、過去2年はこの時期に公表していた通期の業績見通しを公表できない状況にある。とはいえ、コスト削減450億円を見込んでおり、需要堅調を受けて生産販売数量も増産(粗鋼生産2900万トン)の見通し。前期の値上げ効果が効いてくることもあり、増益要因が多い」

――数量増の内訳については?

 「JFE条鋼の仙台製造所を4月1日付でJFEスチールに移管した効果が大きい(仙台の前期実績は60万トン程度)。西日本製鉄所倉敷地区の加熱炉が3月に稼働したことも、高付加価値品の数量拡大に効いてくる」

――鉄鋼以外のセグメントも聞きたい。エンジは通期経常益266億円と過去最高益。

 「ほとんどが国内の利益で、強みを持つ廃棄物発電プラント等の事業が好調だ。現中期で目標とする経常益300億円が射程に入ってきた」

――従来見通し(270億円)よりは若干下振れに。

 「買収した独スタンダード・ケッセル社の欧州事業が下振れ要因の一つとなったが、中長期的にはスタンダード・ケッセルが実績を持つ1千トン規模の大型廃棄物発電プラントをアジア地域で拡販するのが狙い。JFEが持つノウハウとシナジーを出しながら海外を伸ばす」

――JFE商事は。

 「海外事業の改善などで経常益218億円と増益に。買収した北米ケリーパイプ社は15年に在庫評価損が発生したが、昨年12月から月次ベースで黒字化している。15年に為替評価損で苦しんだ中国のコイルセンター群もほとんどが黒字化した」

――造船事業の持ち分法適用会社、JMU(ジャパン・マリンユナイテッド)は。

 「JMUはLNG船の建造に関するコストアップで特損を計上し、前期の通期業績は94億円の最終赤字。当社の連結決算には42億円の赤字が反映されている。新規の船種にチャレンジしており、成長シーズに期待している」

――最後に財務ストック面について。

 「16~17年度の2年間で持ち合い株中心に1千億円を売却してキャッシュフローを捻出する。DEレシオは51・4%と中期計画の目標値をおおよそ達成したが、国際格付けシングルAを回復するにはEBITDA(償却前利益)に対する借入金の倍率を下げることが大事。今は4・9倍だが3倍に近いレベルを目指す。フロー収益拡大により借入金を返済するのが基本だ」

(一柳 朋紀)

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