【ニッケルなど車載電池向け原料】中里住友金属鉱山社長「中長期の安定確保課題」

 住友金属鉱山の中里佳明社長は18日の経営戦略進捗状況説明会で「エコカーの生産台数増加が見込まれる中、電池に使われるニッケル、コバルト、リチウムの三つをどう安定的に確保していくかがユーザーの重大な関心事となっている」と語り、中長期的に増加する車載電池向けの金属原料の確保に向け、「需要家と議論しながらさまざまな形での協力を検討していく」との方針を示した。

 ニッケルについては、16年の世界生産量204万トンのうち、フェロニッケルや含ニッケル銑鉄など「クラスⅡ」が約100万トン、電気ニッケルの「クラスⅠ」が約80万トン、「その他」が約20万~30万トンと推定した上で「その他に分類されるニッケルのうち、電池材料に使われているのは6万トン程度。これが今後のエコカーの進展で大きく増えていく見通しにあるが、その原料をどう確保するかが課題になりつつある」と指摘。また、コバルト需給については「16年は不足バランスとなり、新たな供給源が出なければ不足幅が拡大すると予測される」との見通しを示した。

 中里社長は「現在も材料事業の顧客に金属事業の本部長が訪問し、金属相場など原料を取り巻く状況の情報提供をするなどの取り組みを行っている。また、メタルセキュリティの問題についてはニッケル、コバルト、リチウムの3元素の安定確保に向けて、新たな形での提携の可能性も含めて顧客と議論していく。議論は緒についたばかりだが、メタル原料の生産者としてできる限りの協力をしていく」との考えを示した。さらに「上流の資源開発から中流の製錬、下流の電池材料まで一貫で手掛ける当社の強みを上手く生かし、当社独自のビジネスモデルを生み出したい」と語った。

 同社は、ニッケルおよびコバルトの鉱山開発と製錬を手掛けているほか、電気自動車のリチウムイオン電池に使われるニッケル酸リチウムやハイブリッド自動車の二次電池向けの水酸化ニッケル、リチウムイオン電池向けの三元系の電池材料などを供給している。

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