北朝鮮、水害被災地で鉄条網の設置を進める

昨年8月の台風10号(ライオンロック)で、甚大な被害が発生した北朝鮮北東部。国境の警備施設がことごとく流され、一時はそのスキをついての脱北が急増した。北朝鮮当局は、こうした脱北や密輸を完全にブロックするために、国境地帯で鉄条網の設置を進めている。デイリーNKが現地からの情報を確認した。

設置が進められているのは、咸鏡北道(ハムギョンブクト)穏城(オンソン)郡の三峯(サムボン)労働者区の川岸だ。国境を流れる豆満江の対岸は、中国の吉林省延辺朝鮮族自治州龍井市の開山屯鎭だ。

中国の対北朝鮮情報筋によると、今月初め頃から朝鮮人民軍(北朝鮮軍)兵士8人が現地に現れ、鉄条網を設置するためコンクリートの杭を地面に打ち込む作業を行っている。工事は他の水害被災地でも行われている。

この地域では、台風10号により発生した大水害で、鉄条網はもちろん、監視塔、国境警備隊の兵舎などが流された。

また、水害発生後に近隣の村から多くの住民が姿を消す現象が報告されている。そのうち一部は脱北して中国に向かったものと見られている。

今回の鉄条網設置は、さらなる脱北や密輸を防止するためのものだ。

国境の中国側には、既に有刺鉄線を巡らせたフェンスが設置されており、北朝鮮側で鉄条網が完成すれば、脱北や密輸が非常に困難になると思われる。

北朝鮮専門家によると、鉄条網に電流が通されていない限りはいくらでも切断できるが、脱北や密輸の心理的萎縮を狙ったものと考えられるという。

しかし、「上に政策あれば、下に対策あり」のお国柄だけあって、ほとぼりが冷めれば何らかの抜け道を使って密輸が再開されるだろう。

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