ヘイト対応で加筆し改訂 教職員向け外国人教育資料

 川崎市教育委員会はヘイトスピーチ解消法の施行を受け、多文化共生教育推進のために教職員らに配布している資料「かわさき外国人教育推進資料Q&A『ともに生きる』」を改訂した。ヘイトスピーチによる被害状況や市の対応などを加筆。26日に小中高、特別支援の全市立学校計178校に配り、差別をなくすための指導をさらに徹底するよう、渡辺直美教育長名で各校長宛に通知した。

  「ともに生きる」(A4版、54ページ)は、在日コリアンの子どもたちへの差別や教育課題と向き合い、1986年に制定された「市在日外国人教育基本方針」を受け、93年に初版された。基本方針の趣旨や市の取り組みを理解してもらう目的で、新採用教職員や、外国人教育・人権教育を担当する教職員、市民館職員、市民ボランティアらに配布している。毎年統計資料などを差し替えているが、大幅な改訂は98年の基本方針を改定した以来という。

 今回の改訂では、資料のQ3「在日外国人教育(多文化共生教育)はなぜ必要か」の回答の最後に、「ヘイトスピーチなど外国人を巡る人権問題について憂慮すべき状況が社会問題化している」と盛り込んだ。また「こうした言動は人々に不安感や嫌悪感を与えるだけでなく、人の尊厳を傷付けたり差別意識を生じさせたりする」とも指摘した。

 「在日外国人教育をめぐる関連事項」では、ヘイトスピーチ対策に関する項目を追加。1ページを使い、市内でヘイトスピーチが繰り返された経緯や、解消法の趣旨、市の取り組みを説明。「規制だけではヘイトスピーチの被害は防げない。効果的なのは多文化共生社会を築き上げること」とした市人権施策推進協議会の提言も挙げ、教育の重要性を強調している。

 市教委は「市内の被害状況や解消法の成立など、現状をきちんと理解したいと考えている教職員は多いはずなので役立ててほしい。改訂部分の趣旨がしっかり伝わるよう、重みのある教育長名で通知した」としている。

 同資料は図書館や市総合教育センターのホームページなどでも閲覧できる。

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