【工場ルポ】〈マレーシアのステンレス冷延メーカー、バル・ステンレス〉アセアン日系車向けを開拓

 アセリノックスと日新製鋼、阪和興業が出資するマレーシアのステンレス冷延合弁事業、バル・ステンレスが2012年1月に稼働を開始し5年。中国から流入する輸入材でアセアン域内市場の競争は激しいが、合弁会社の強みや技術力を武器に徐々に販路を開拓してきた。同社の今をレポートする。

バル・ステンレスの建屋

 マレーシアとシンガポールの国境に位置するジョホール州パシル・グダン。ジョホール港近くの工業地帯にまだ真新しさを感じさせる鮮やかな紺色の建屋を見せるのがバル・ステンレスだ。

 生産設備はいずれも一流の製鉄プラントメーカーによるもの。1キロメートルの建屋に据えられた世界最長の焼鈍酸洗(AP)設備はオーストリアのアンドリッツ製。計40万トンの冷延ミル2基はそれぞれプライメタルズ・テクノロジーズ・ジャパン(当時の三菱日立製鉄機械)とドイツのSMSシーマグ製だ。2基は薄物と厚物の作り分けなどに活用される。冷延後のAP設備、そして注文に応じ加工する精整工程も備える。

 母材のステンレス熱延はアセリノックスの南アフリカ拠点、コロンバスが主力ソース。特殊なスペックのものは日新製鋼からも供給される。販売の7割は輸出で、アセアン域内に限らず世界各地に販路を開拓。今年末には稼働率が70%を超える見込みだ。

 3年前に赴任したオズワルド・ウルフCEOは「いいチームで仕事ができている。日新製鋼のお陰でアセアンの日系車メーカー向けも開拓できた」と語る。これまでの販売先は流通向けが多かったが、徐々に車の排気系向けといったエンドユーザー向けも伸びており、その地歩を固めている。(マレーシア・ジョホール=黒澤広之)

© 株式会社鉄鋼新聞社