ホークス24歳捕手のスローイングがスゴイ 圧巻送球で名捕手超えの可能性も

驚異的な数字だった。7割1分4厘。この確率、一体、何の数字であるか、お分かりになるだろうか? 12球団を見渡してもダントツのトップ。2位以下に3割以上の差をつけていた。実はこれ、ソフトバンクで急成長を遂げている捕手、甲斐拓也の26日時点での盗塁阻止率である。

ソフトバンク・甲斐拓也【写真提供:福岡ソフトバンクホークス】

観客驚嘆、他球団に脅威…一見の価値あるソフトバンク甲斐の圧巻送球

 驚異的な数字だった。7割1分4厘。この確率、一体、何の数字であるか、お分かりになるだろうか? 12球団を見渡してもダントツのトップ。2位以下に3割以上の差をつけていた。実はこれ、ソフトバンクで急成長を遂げている捕手、甲斐拓也の26日時点での盗塁阻止率である。

 23日のロッテ戦(ヤフオクD)。この日の先発だった東浜の立ち上がりは不安定だった。いきなり先頭の荻野貴に四球。その荻野貴は、1死から3番・根元の2球目でスタートした。これも甲斐は完璧な送球で刺した。リーグ屈指の俊足である走者にもかかわらず、悠々のアウト。「拓也に助けてもらって、すごく楽になった」と右腕。制球の定まらなかった立ち上がりを救い、ゲームの流れを大きく引き寄せる隠れたファインプレーだった。

 昨季のパ・リーグの阻止率トップは西武・炭谷の.317。セ・リーグは巨人・小林の.357だった。一般的には4割近くあれば、優秀と言われる盗塁阻止率で、甲斐の数字は驚異的だ。盗塁阻止率が記録されるようになった1969年以降の記録を見ると、これまでのシーズン最高記録は1993年のヤクルト・古田敦也が記録した.644(45企図29盗塁刺)。パ・リーグの最高は1979年の梨田昌孝(現楽天監督)の.536(69企図37盗塁刺)である。

 盗塁阻止率の記録は、チーム試合数の半数以上に出場していることが条件となる。今季49試合中28試合に出場し、うち18試合で先発マスクを被っている甲斐。26日時点では、許した盗塁は2つだった。そこまでは7回企図され、うち5回を刺していたことになる。

28日終了時点でも盗塁阻止率6割、一見の価値ある甲斐のスローイング

 27日の日本ハム戦で2盗塁を許してしまったが、28日の日本ハム戦(札幌D)では、3回1死から出塁した日本ハムのリードオフマンである西川の盗塁を阻止。素早いステップと矢のような、そして寸分の狂いのない送球で刺したシーンは圧巻だった。昨季リーグ3位の41盗塁をマークした西川だったが、いくらかの余裕すらあった。2点の先制点を奪った直後。背中の張りからの復帰登板となった千賀を助けるプレーだった。

 もちろん、盗塁の阻止には、投手の牽制やクイックの速さなどが必要で、投手との協力があってのもの。その点で言えば、今、甲斐が主にバッテリーを組む千賀、東浜の力があり、逆にフォームが大きく、盗塁を仕掛けられがちな外国人投手、バンデンハークやサファテと組む回数が少ないことも、数字を引き上げる要因ではあるだろう。

 28日の日本ハム戦を終えて、盗塁阻止率は.600。シーズン序盤で盗塁を企図された回数がまだ少ないが、まだ梨田氏の数字を上回り、古田氏にも迫っている。今後、その数字は変動するであろうが、その素早いステップと強肩から繰り出される二塁への送球は圧巻の一言。見る人を驚嘆させるだけの鋭さがあり、他球団にとっては脅威だろう。

 今後の働き次第では、歴代の名捕手のシーズン盗塁阻止率を超える可能性も――。そんな24歳のスローイングには、一見の価値がある。

福谷佑介●文 text by Yusuke Fukutani

© 株式会社Creative2