小棒懇談会・飯島会長「需要しっかり見極めを」 16年度出荷量844万6000トンに

 全国小棒懇談会は29日、運営委員会を開催し、飯島敦会長(新日鉄住金常務執行役員建材事業部長)が2016年度の小棒出荷が844万6千トンとなったことを受けて「生産と出荷がともに840万トン台。期待は900万トンだが、需要は底割れしていない。4月の生産も前年同月比で5カ月連続プラスであり、少し安心して胸をなで下ろした」と感想を述べた。また、3月末の国内在庫が58万8千トンだったことを挙げて「昨年11月末以来4カ月ぶりと久々の60万トン割れ。メーカー在庫も57万1千トンに低下しており、それだけ荷動きがあった証しだ。これも一つの安心材料だろう」とした。その上で「着工統計は前年比でプラス傾向にあり、今後の需要は、決して悪くはないと思う。夏場以降の需要増を期待しつつ、足元は下期に向けた準備をすべき。鉄スクラップ価格の変動に一喜一憂せず、引き続き需要をしっかり見極めてほしい」と語った。

「需要の底割れは回避」

 高島秀一郎副会長(共英製鋼会長)は「メーカーに注文が入るか否かはスクラップの値動き次第。この傾向は明確だが、中国からスクラップ輸出が始まり、価格動向が極めて不透明になっている。世界的な需給にこれまでなかった要素が加わった格好であり、70億トン超という中国の鉄鋼蓄積量を考えると相当な影響が見込まれる。メーカーはスクラップの価格変動に臨機応変に対応できるよう準備が必要。今は下期に向け収益環境を再構築する大事な時期だけに、細心の注意を払って生産・販売に当たってほしい」とコメント。

 宮澤正明副会長(エムエム建材常務執行役員)は「3月末から4月にかけて中国産スクラップが輸出され、アジア市況が下落した。ビレットや鉄筋も下落したが、5月には中国政府の環境対策で減産指令が出て、国内価格が上昇。輸出市況も5月には回復した」と話した。中国産スクラップの輸出に関しては「さほど大量の輸出はされないとの見方から徐々に市況は落ち着いてきた。ただ、現在および今後どのように輸出されるかが、アジア地区のスクラップや電炉製品に大きく影響を与えそうだ」と述べた。

 経済産業省の山下隆也金属課長は5月中旬の中国出張の報告として「中国政府は地条鋼の生産停止にかなり真剣に取り組んでいる」と指摘。日本側から鉄鋼の需要見通し策定を提案し、中国側も前向きに取り組みを始めたことなどを紹介した。

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