藤川球児、衰えない三振奪取力 前人未到のハイペースで“不世出の投手”に

阪神の藤川球児投手が5月30日の交流戦ロッテ戦に9回から登板し、先頭の角中勝也から三振を奪い、通算1000奪三振を達成した。771.2投球回での達成は、野茂英雄の871回を抜いて史上最速となった。

NPB史上最速で1000奪三振に到達した阪神・藤川

 阪神の藤川球児投手が5月30日の交流戦ロッテ戦に9回から登板し、先頭の角中勝也から三振を奪い、通算1000奪三振を達成した。771.2投球回での達成は、野茂英雄の871回を抜いて史上最速となった。

 初奪三振は2000年3月31日の横浜戦、プロ初登板して3回裏に谷繁元信から奪っている。1000奪三振は史上146人目、決して珍しい記録ではないが、藤川球児の奪三振ペースは驚異的だ。NPBで1000奪三振以上の投手のK9(9イニング当たりの奪三振数)のランキング。※はNPBで現役を続けている選手。

1藤川球児 11.66(1001奪三振772.1回)※
2野茂英雄 10.31(1204奪三振1051.1回)
3杉内俊哉 9.28(2156奪三振2091.1回)※
4伊良部秀輝 8.97(1282奪三振1286.1回)
5ダルビッシュ有 8.87(1250奪三振1268.1回)
6石井一久 8.84(2115奪三振2153.1回)
7松坂大輔 8.70(1357奪三振1403.2回)※
8田中将大 8.47(1238奪三振1315回)
9メッセンジャー 8.43(1192奪三振1272回)※
10江夏豊 8.41(2987奪三振3196回)

 藤川は野茂を抑えて史上1位、イニング数を大きく超える奪三振数だ。野茂は、24歳で1000奪三振を記録している。そして働き盛りでMLBに渡った。藤川球児は36歳での1000奪三振。それでいて、野茂の記録を大きく上回っている。

30歳を過ぎても衰えない奪三振ペース

 一般的に、K9は30歳を超えると下落する傾向にあるが、藤川は29歳までのシーズンで11.76(776奪三振、593.2回)、30歳以降のシーズンで11.33(225奪三振、178.2回)とほとんどペースが落ちていない。NPB屈指の奪三振王と言えよう。

 ちなみに藤川は、MLBでの3シーズンでも、10.80(32奪三振、26.2回)という高いK9を記録している。速球とフォークというシンプルな配球だが、球の切れが抜群なのだろう。

 この表には藤川を含めて松坂世代が3人含まれている。また最近の投手も多い。21世紀以降、変化球の進化によって奪三振率は増える傾向にある。しかし、その中でも藤川は別格だ。

 現役では800奪三振以上でK9が9を超える投手が2人いる。

五十嵐亮太(ソフトバンク) 9.90(861奪三振782.1回)
則本昂大(楽天) 9.29(847奪三振820.1回)

 7試合連続で2桁奪三振がかかる則本は、今季中にも1000奪三振に達する可能性があるが、K9のペースでは、藤川には全く届かない。奪三振のペースでは、藤川球児は不世出の投手と言ってよいだろう。

広尾晃●文 text by Koh Hiroo

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