【共英製鋼、拡大するベトナム鉄鋼事業(中)】〈港湾事業「TVP社」〉鉄スクラップを安定調達 新ヤード完成、年内開港へ

 ビナ・キョウエイ・スチール(VKS)の粗鋼生産量は月間4万~5万トン。同社は鉄スクラップ購入比率を「輸入85%、国内15%」と想定していたが、昨年は「ベトナム国内における発生量が少ない上、品質も良くない。国内調達は10%程度にとどまった」(岩佐博之VKS社長)という。まだ国内での調達は期待できない状況であり、輸入スクラップが購買の中心になる。

 メーンの輸入先は日本であり、調達量の7割を占める。VKSは、共英製鋼がこれまで築いてきた国内調達網を活用しながら、購買体制の構築を進めてきた。

 日本以外では、シンガポール・フィリピン・香港からはバルク船で、米国・豪州・カナダからはコンテナで調達する。

1カ月分の5万トン在庫

 共英はVKSの近隣で、チーバイ・インターナショナル・ポート(TVP)による港湾事業も展開している。スクラップ在庫については、1カ月分の使用量に相当する5万トンを、VKS工場内に2万トン、TVP敷地内の専用倉庫に3万トン在庫できるよう、スクラップヤードを整えた。岩佐社長は「定期購入スキームも構築でき、スクラップの安定調達体制は整った」と話す。

完成した鉄スクラップ専用倉庫

 TVPの敷地面積は約42万平方メートル。第1期工事は約5400万ドル(約60億円)を投じ、そのうち約25万平方メートルを造成する。パナマックス級の船舶が接岸できる300メートルの主岸壁、内航船が接岸する315メートルのバージバースを建設中で、工事は順調に進ちょくしている。今年秋に竣工する予定で、「年内には開港したい」(木下勝之TVP社長)方針だ。

 同港湾には倉庫を2棟建設する予定で、1棟はすでに完成した。VKS向けのスクラップ在庫ヤードとして利用される。もう1棟は他社製品も含めた鋼材の輸出を主目的とした倉庫とする計画だ。

 「2期工事は設計を含め、まだ検討中」(同)だが、「3年後には操業を開始したい」とし、扱い量は1期で年間約250万トン規模、2期工事が完了すると同500万トン規模にまで拡大することになる。

 社名は接するチーバイ川から採用した。「正確には川ではなく、入り江」だが、河口はカイメップ川と呼ばれ、ここでも港が多数開港している。木下社長は「今後カイメップ・チーバイ地区はベトナム南部の経済を支える主要港になる」として、発展に期待を寄せる。

チーバイ川で進む開港工事

 TVPが扱う荷物のメーンターゲットは鉄鋼業関連。港湾近隣にはVKSのほか、新日鉄住金系列のCSVC、NPV、ブルースコープといった外資系、国内系など多数の鉄鋼ミルがある。スクラップの扱いについてはVKS向けをメーンとしながら、「余力があれば、他社の分も手掛けたい」考えで、他に薄板コイルの輸出入も視野に入れている。

 「開港3年目から数億円程度の利益を確保したい」とし、ベトナム南部の経済発展に貢献しながら、ベトナムにおける主要物流拠点となることで安定収益を確保していくとともに、将来はベトナム南部とアセアン地区の発展に寄与する港湾を目指す。

VKSの将来像は共英・山口事業所

 VKSの昨年の鋼材生産量は72万トン。生産量では共英最大の事業所であり、今年は80万トンにまで生産量を増やす計画。製品構成については約85%が鉄筋で、その他も鉄筋の代替品として使われる線材。

 VKSは将来像として共英の山口事業所をモデルにしている。同事業所は鉄筋のほか一般形鋼など多様な電炉製品を生産し、リサイクル事業も展開する収益力の高い事業所だ。

 現在のVKSの生産品目は鉄筋と線材がほとんどだが、アングルの生産も可能であり、今年7月にはさらに2サイズ増やす予定。「こうした需要はベトナムではまだ少ないが、徐々に出てくるはず」(岩佐社長)。

 2011年から生産を開始したネジ節鉄筋も、現在は製品出荷量の1%未満にとどまるが、将来的な需要増に備えて少しずつ生産を増やしていく。

 また、将来的にはリサイクル事業への進出も考えている。「信頼感のある当社のブランドイメージを生かせる上、地域社会への貢献にも資するのではないか」(同)。

 「共英の各事業所の特徴や強みをすべて集約した拠点にしたい」―VKSは、港湾事業のTVPとの連携を深め、ベトナム南部で存在感のある電炉メーカーとして地位の確立を目指す。

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