新日鉄住金エンジ・廃棄物由来の溶融スラグ、国内初の肥料化へ

 新日鉄住金エンジニアリング(社長・藤原真一氏)は1日、一般廃棄物由来の溶融スラグを国内で初めて肥料化したと発表した。シャフト炉式ガス化溶融炉から産出される溶融スラグの肥料登録申請を農林水産省に行い仮登録された。静岡市および静岡大学との産官学連携による取り組みで、主にイネ科植物の肥料として活用する。今年度中には本格販売を開始する見通し。

 シャフト炉式ガス化溶融炉から産出される溶融スラグは約1800度の高温で溶融され、高品質で安全性も高い。これまで累計200万トン以上を天然砂の代替品として有効活用しており、最終処分量の極小化と川砂や山砂の省資源化に貢献してきた。

 同社が静岡市の西ケ谷清掃工場へ納入したガス化溶融炉(2016年度の処理量11万1千トン、溶融スラグ発生量9千トン弱)から産出される溶融スラグは奄美大島の藻場再生用材として活用しているほか、水害対策用の高機能土嚢材として拠出する防災協定を同市と締結するなど、さらに高機能な用途で活用されている。今回、イネ科植物などへの育成促進研究を静岡大などで実験して行った。

 その結果、イネ科植物の茎やモミの成長に必要なケイ酸成分およびアルカリ分などが溶融スラグには豊富に含まれ、吸収率が10~25%増すことがわかった。これにより従来の肥料と比べ収穫量が2~3割程度増すなど同等以上の肥料効果が確かめられた。また、溶融スラグの品質および安全性は従来用途よりも高い安全性が要求される肥料の市場分野でも十分満たすことを確認した。

 肥料は肥料取締法によって農林水産省への登録が義務付けられており、農水省の審査を経て仮登録に至った。商品名は「ディーエムケイカル」で、当面は静岡県内の肥料メーカー、商社、個人商社へ販売。本登録後には同社が納入した全国約40カ所の溶融炉から発生する溶融スラグも肥料として販売していく方針。

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