44歳で陸上挑戦、国際大会で2個の「金」 平塚市の杉崎さん「何もできなかった自分がここまでできた」

 不惑を過ぎた44歳で陸上競技に挑戦し、12年目のことし4月に開催された中高年世代の国際大会で、2個の金メダルを獲得した男性がいる。予備校講師で平塚市河内の杉崎和彦さん。節制と自己研さんを重ねてきた55歳は「親たちが生き生きとすれば世間も明るくなるのでは。その先陣を切って示したい」と話し、これからもひた走ることを誓う。

 ニュージーランドのオークランドで、4月下旬に開かれた生涯スポーツの世界大会「ワールドマスターズゲームズ」の陸上競技大会。杉崎さんはM55(55〜59歳)の100メートル障害、400メートル障害を制したほか、銀メダル二つ、銅メダル二つも手にした。

 高校時代の100メートル走のタイムは15秒3。「何もできなかった自分がここまでできた。この大会で世界一になることが目標だった」と言い、メダルを誇らしげに見つめる。時差が少ないニュージーランドでの今大会に4年前から照準を絞ってきただけに、喜びはひとしおのようだ。

 陸上との出合いは2006年4月。当時中学校の陸上部に所属していた長女に買い与えたスパイクとともに、ふと自分用にも購入した。

 「娘に短距離を教えてもらえるかも」。淡い期待とともに走り始めたが、勉強熱心な英語担当講師はすぐさまのめり込んだ。200メートルの日本記録を持つ末続慎吾氏のランニングフォームをコマ送りで見て研究したほか、トップ選手のトレーニング方法も取り入れた。

 20%だった体脂肪率は今や5%に。「記録や数値が良くなっていくことにやりがいを感じた。自分で考えながら挑戦することが楽しかった」と振り返る。

 競技を始めた翌年の07年は、神奈川マスターズ選手権の100メートルと200メートルで2冠を達成すると、全国大会では200メートルで2位と大躍進。ハードル競技にもチャレンジし、13年にはM50(50〜54歳)の400メートル障害で当時の日本記録を樹立するまでに進化を遂げた。

 世界一という当面の目標を果たし、次に見定めるのは、ことし中に400メートル障害など3種目での日本記録更新と、10種目の県記録更新だ。「フィールド種目にも挑戦する。何でも記録が出せる、というところを見せたいですね」。日焼けした顔から白い歯がのぞいた。

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