金属行人(6月6日付)

 米国トランプ大統領による「パリ協定」からの離脱表明が、日本の鉄スクラップ業者の心配の種になっている。パリ協定と日本の鉄スクラップ業。直接的な関係は薄そうだが、中国の動きを通じて今後の事業環境に大きく影響する可能性があるという▼話の筋立てはこうだ。世界第2位のCO2排出国である米国がパリ協定から離脱し、地球温暖化対策に金を使わなくなれば、最大の排出国である中国の環境対策への意欲が減退。環境負荷の低減を目的とした中国での鉄スクラップ消費が伸び悩み、中国のスクラップ自給化が早まるというもの▼かつて中国政府は環境負荷の大きいミニ高炉や小型の誘導炉を閉鎖し、沿岸部に集じん装置などを整備した電気炉の新設計画を示していたという。この一端が6月末までの「地条鋼」生産停止だが、米国のパリ協定離脱を受けて電気炉の新設などを手控える事態となれば、中国のスクラップ内需が減りかねない▼すでに中国の鉄スクラップ輸出は始まっているが、4月の輸出量は1万5千トン程度。前月比で250倍と急増ながら数量的にはまだ少ない。ただ、粗鋼生産が年8億トン、鉄鋼蓄積量が70億トン超と巨大な隣国だけにその動きは確かに気掛かり。前述の筋立てが現実になるか不明だが、打てる手立てがあれば早めの対応が望ましい。

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