【カノークスの経営戦略】〈木下幹夫社長に聞く〉地域・顧客密着さらに徹底 建材の加工機能強化、輸出拡大

 鉄鋼商社のカノークス(本社・名古屋市)は、鉄鋼業全体で進む再編の流れの中で、原点思考を忘れず「営業品質の向上」への取り組みを強化する。自社の持ち味である「地域・顧客密着」をさらに徹底し、メーンとなる自動車関連のシェアを維持するとともに、建材、輸出などの非自動車分野にも積極的に取り組む。木下幹夫社長に、現状と展望、足元の経営課題などを聞いた。(名古屋・片岡 徹)

カノークス・木下社長

――足元の自動車を中心とする事業環境の認識は。

 「自動車関連は堅調。当社メーンのトヨタ自動車さんをはじめ、他の自動車メーカーさんもまずまず堅調。建築関連は、足元ではさえない状態だが、今後は回復基調となるだろう。住宅関連、非住宅も大型物流倉庫の建築案件があるなど、それほど悪くない。2020年の東京五輪に向け2~3年は、需要は堅調だろう」

――今期の業績見通しは。

 「売上高は1160億円、経常利益は18億円強を見込む。今後、薄板在庫の380万トン台が続けば、市況は上伸する可能性が高い。メーカーの生産は引き続きタイトであるため、輸入材の動向にもよるが、大きな価格面での下押しなどは予想されない」

――今期の課題は。

 「まず、自動車関連の数量を減らさないこと。そして、非自動車分野の需要を、アンテナを高くして取り込んでいくこと。また、これまで継続してきた人材育成、女性の活用拡大により、会社を一体化させる取り組みが重要」

――自動車分野では、具体的にどんな営業を。

 「徹底した顧客管理を行っていく。きめ細かな対応、情報収集、迅速なフットワークなど当社の持ち味を生かした営業品質の向上がカギになる」

 「また、他商社との差別化を進め、ワンストップサービスのさらなる向上、加工・物流機能の強化などに取り組んでいきたい。さらに、お客様との信頼関係をさらに高めるために、お客様の金型を一時的に預かるサービスや、アルミ、副資材などの提供を通じ、ニーズに即した販売対応を進めたい」

――非自動車分野の強化策は。

 「自動車・鋼管建材・鋼板の3部会組織の機能を生かし、横断的な情報・戦略共有を展開したい。建材関連では、コラムの加工などに期待が持てる。鉄骨ファブリケーターとの連携を緊密にして、加工機能を集約していきたい。また、輸出関連業務についても、結成した『輸出チーム』などで強化・拡大したい」

――商社・メーカーの再編が進んできています。

 「今後、何が起きてもおかしくないというような状況。そうした変化に備えて、当社の周囲で何が起きても、まずはカノークスとしての機能を発揮できる体制をつくり、メーカー、お客様から信頼される会社でありたい」

――日新製鋼の新日鉄住金子会社化なども進んでいます。

 「影響はないとは言えないが、それを前向きにとらえることが大切。数量アップにもつなげたい」

――地域戦略については。

 「最大のポイントは建築需要が見込める関東地区での営業強化。人材の登用をはじめとする具体的な強化策を推進中。また、東海、九州地区での鋼管などの切断加工機能強化も検討している」

――取引先との連携強化やM&A策などは。

 「アルミなど他品種の加工機能を付加して顧客に貢献することや、自社の身の丈に合った投資などを考えていきたい」

――子会社の状況と今期の課題は。

 「カノークス北上は、東北地区での重要加工拠点。雇用面での課題もあるが、機能強化していきたい。また空見スチールサービスは、当社の必要不可欠な鋼板加工拠点。2014年に策定した『新経営計画』をベースに、加工量の維持拡大を図りたい。現場感覚を磨き経験を増やすため、総合職の出向も順次実施してきたい」

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