交流戦もWBC余波? 筒香、山田の落ち込み深刻 塁打で見る“パワーアップ率”

交流戦も後半戦に入った。例年通り、43勝28敗1分とパ・リーグが大きくリードしている。交流戦は全108試合、1引き分けがあるので、現時点で勝ち越しは54勝、パ・リーグはあと11勝で、12回目の勝利が決まる。

DeNA・筒香嘉智【写真:荒川祐史】

昨年→今年の平均塁打の推移で見る球団、選手の“パワーアップ率”

 交流戦も後半戦に入った。例年通り、43勝28敗1分とパ・リーグが大きくリードしている。交流戦は全108試合、1引き分けがあるので、現時点で勝ち越しは54勝、パ・リーグはあと11勝で、12回目の勝利が決まる。

 今季の試合を見ていると、パが長打で圧倒するケースが目立つ。交流戦だけでなく、今季のパは本塁打、長打が飛び交う試合が増えている。数字で見てもそれがはっきりわかる。

 平均塁打は、塁打数を安打数で割った単純な数字だが、長打の多さを示す端的な指標だ。この数字の球団別の昨年から今年への推移を見ていく。

【パ・リーグ】

(日)1.44→1.50 104.0%
(西)1.50→1.56 104.1%
(楽)1.44→1.55 108.2%
(ロ)1.42→1.45 102.1%
(ソ)1.48→1.60 108.1%
(オ)1.40→1.42 101.3%
全体 1.45→1.52 104.9%

 チーム打率1割台に長くあえいでいたロッテも含めて全球団が、平均塁打を上げている。リーグ全体がパワーアップしているのだ。楽天、ソフトバンクの伸び率が大きい。楽天は外国人トリオ、ソフトバンクは復調した柳田悠岐、新加入のデスパイネ効果と考えられる。

セは2球団を除き軒並み低下…落ち込み激しい巨人

【セ・リーグ】

(広)1.55→1.54 99.6%
(巨)1.53→1.41 92.4%
(De)1.54→1.46 94.8%
(神)1.43→1.46 101.7%
(ヤ)1.48→1.40 94.8%
(中)1.44→1.45 100.7%
全体 1.50→1.46 97.4%

 阪神、中日を除いて軒並み下がっている。リーグトータルでもパに逆転されている。巨人の落ち込みが激しい。セは明らかにパワーダウンしている。

 個別の選手の平均塁打の推移を見ていこう。セ・パ両リーグ、昨年、今年の両年とも規定打席に達している選手の、パワーアップ率10傑は以下の通り。

120.6%鈴木大地(ロ)1.36塁打→1.65塁打
119.1%茂木栄五郎(楽)1.47塁打→1.75塁打
118.7%デスパイネ(ソ)1.71塁打→2.03塁打
117.8%内川聖一(ソ)1.43塁打→1.69塁打
115.9%秋山翔吾(西)1.43塁打→1.65塁打
110.6%柳田悠岐(ソ)1.71塁打→1.89塁打
110.5%T-岡田(オ)1.66塁打→1.83塁打
109.4%坂口智隆(ヤ)1.15塁打→1.26塁打
109.2%田中賢介(日)1.15塁打→1.26塁打
106.7%西川遥輝(日)1.26塁打→1.35塁打

※デスパイネは2016年はロッテ

 ずらっとパ・リーグの打者が並ぶ。

 鈴木大地は遊撃から二塁にコンバートされ、守備の負担が軽くなって長打が増えた。2年目の茂木栄五郎は、昨年は2番、6番を打つことが多かったが、今季は1番に固定され、昨年の7本塁打を早くも上回る12本塁打。デスパイネはソフトバンクに加入して長打が増えている。

 セでは、ヤクルトの坂口が入っているのみ。

ワースト2にWBC戦士…パワーダウン率10傑は?

 反対にパワーダウン率10人は以下の通り。

91.2%坂本勇人(巨)1.61塁打→1.47塁打
90.9%今宮健太(ソ)1.51塁打→1.37塁打
90.1%鳥谷敬(神)1.37塁打→1.23塁打
89.7%浅村栄斗(西)1.65塁打→1.48塁打
89.4%中村晃(ソ)1.31塁打→1.17塁打
85.0%ロペス(デ)2.03塁打→1.73塁打
83.4%バレンティン(ヤ)1.92塁打→1.60塁打
83.0%メヒア(西)2.02塁打→1.67塁打
81.6%山田哲人(ヤ)2.00塁打→1.63塁打
73.3%筒香嘉智(デ)2.11塁打→1.55塁打

 目につくのは今年のWBC出場組が軒並みパワーダウンしていること。西武秋山、ソフトバンク内川の例外はあるが、侍ジャパンだけでなく、オランダ代表だったバレンティンも含めて長打が大きく減っている。

 WBCはセの選手が中軸を担ったが、特に、山田哲人、筒香嘉智の落ち込みは深刻だ。さらに、セはベテラン選手が多い。彼らがピークを過ぎてパワーが落ちていることもあるだろう。対照的にパは若手が台頭している。

 育成方針、FA制度など、さまざまな要因が絡んでいると思われる。この傾向が、今後も続くかどうか、注目していきたい。

広尾晃●文 text by Koh Hiroo

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