【神戸製鋼の事業戦略《エンジニアリング事業部門》】〈眞部晶平取締役専務執行役員(エンジニアリング事業部門長)〉今年度受注目標1000億円、中小型案件を積み上げ 還元鉄プラントでソリューション営業

 還元鉄プラントのエンジニアリングなどを手掛ける神戸製鋼所のエンジニアリング事業部門は今年度の事業計画で、目標受注額として1千億円程度の確保を掲げた。主力の鉄源プラントの受注環境は依然厳しいが、独自の技術力・ノウハウを生かした商品群を武器に、中小型案件の受注を着実に積み上げる方針だ。足元の事業環境や今年度の事業計画を事業部門長の眞部晶平取締役専務執行役員に聞いた。

神戸製鋼所・眞部取締役専務執行役員(エンジニアリング事業部門長)

――2017年度の目標受注額は1千億円程度。16年度実績の1742億円に比べ控えめな目標に映る。

 「16年度は廃棄物処理関連事業で複数の大型案件を受注したため、年間受注額が積み上がった。17年度は主力の還元鉄プラントの受注環境はまだ厳しいものの、中小型案件を着実に積み上げ、1千億円の目標を確実に達成することが肝要と考えている」

――受注や収益を積み上げていく上で、どのような戦略を描いているのか。

 「『ミドレックス』方式の還元鉄プラントを手掛ける米子会社のミドレックス社は、16年度にアルジェリアで2基目を受注するなど健闘している。本体が手掛ける鉄鉱石ペレットプラントも16年度に1基受注できた。ただ、還元鉄や鉄鋼原料の需給は依然、供給過剰が続いており、関連プラントの受注環境は依然として厳しい。この状況は17年度も続くと覚悟している。17年度に関しては、砂防・防災製品、新交通システムなどで、中小型案件を着実に捕捉していくことで目標を実現したい」

 「鉄源プラントに関してはグローバル・ソリューション(問題解決)ビジネスを拡大できるかが課題となる。ミドレックスの場合、1970年代に納入が始まり、すでに累計納入基数が70を超えている。納入案件の中には、改造して生産効率化や省エネに結び付けたいというニーズも多い。こうしたニーズに対応する形で、現在、還元鉄プラントでソリューション事業の強化を進めているところだ」

――既存納入案件を対象としたサービス事業は収益を押し上げることにもつながると…。

 「エンジニアリングビジネスは受注して納入すれば完了というケースが多い。極端に言えば1回きりのビジネスだ。新規のプラント案件が少なくなる中で、従来型に固執しているとじり貧になる可能性もある。そこでユーザーとの関係を継続する『ストック・ビジネス』が従来以上に重要になる。鉄源プラントだけでなく、他の分野でもこうしたビジネス展開を強化していくつもりだ」

――事業環境が厳しい中で、経常利益目標は16年度実績を上回る30億円に置いた。

 「受注残がまだある上、今年度に計上予定の売上高のうち、すでに受注が決定している案件も多く、今年度の売上高は16年度比約10%増の1340億円を見込む。もちろん、受注案件を着実に実行していくことが必要だが、16年度(28億円)並みの利益は達成できると考えている」

――将来的に収益に貢献できる事業は。

 「当社は砂防・防災製品のほかに、新交通システム関連事業など独自の商品群を持つ。さらに16年にはスウェーデンのスタズビック社と合弁会社を設立、原子力関連の廃棄物処理事業にも本格的に乗り出したところだ。こうしたビジネスは『防災』『都市インフラ』『環境』といったキーワードに直結しており、国内のみならず新興国などでも将来はニーズが高まるとみている。こうしたニーズに対応しながら技術を深化させていくことで安定した収益を確保できる事業に育てたい」

 「事業部門のグループ会社、神鋼環境ソリューションは廃棄物処理・水処理関連のプラントで実績を積んでいる。すでに連結業績への貢献は大きいが、連携をさらに強化することでグループ全体での収益力強化も可能だろう」(高田 潤)

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