〈時代の正体〉「分断社会」処方箋は 横浜でシンポ

【時代の正体取材班=石橋 学】障害者殺傷事件や在日コリアンへのヘイトスピーチ、生活保護受給者へのバッシングと社会的弱者を排斥する「分断社会」の処方箋を考えるシンポジウムが17日、横浜市中区の市技能文化会館で開かれた。財政社会学者の井手英策・慶応大教授が講演したほか、県内の社会福祉法人の取り組みが紹介された。  小田原市の生活保護担当職員が「保護なめんな」と書かれたジャンパーを着ていた問題で、市検討会座長を務めた井手教授は「貧困の拡大で多くが弱者となり、転落の不安からさらなる弱者を殺し、傷つけることで精神的な安らぎを得る異常な社会、大勢が被害者にも加害者にもなり得る社会になっている」と指摘した。

 増税により子育てや教育、医療、介護を無償化・低額化して自己負担を減らし、結果、格差縮小にも向かう「みんなが必要なものを痛みを分かち合うことで得て、みんなが感じる不安を解消する税制」を提唱。経済成長神話に基づく自己責任の社会から「誰もが頼り合って受益者となり、安心して生きられる社会」への転換を呼び掛けた。

 社会福祉法人訪問の家の名里晴美理事長は横浜市栄区で地域と交流を続ける障害者通所施設の取り組みを紹介。川崎市川崎区で差別のないまちづくりに取り組む社会福祉法人青丘社の三浦知人事務局長はヘイトデモとの闘いを「市民を守るべき政治家ら公人が差別を正面から否定しない社会を思い知った。地域の訴えが国や自治体を対策に動かした」と振り返った。

 シンポはかながわ国際交流財団が主催し、約150人が参加した。

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