「野際さん恩返しに」 向井理、企画・出演した映画が野際遺作に

 横浜市出身の俳優・向井理(35)が企画・出演もする映画「いつまた、君と〜何日君再来(ホーリージュンザイライ)〜」(24日公開)のヒットを祈願して19日、深川栄洋監督(40)と主演した女優の尾野真千子(35)とともに東京・神田明神を訪問した。晴れ男を自称する向井は「気持ち良くきれいに晴れて良かった」と笑顔を見せた。

 映画は、夫の死後も戦後の混乱期をたくましく生きた向井の祖母・芦村朋子さんが半生をつづった手記を元に、7年の歳月をかけ映像化。向井は祖父の吾郎を、若き日の朋子さんを尾野、現在の姿を13日に肺線がんで亡くなった野際陽子(享年81)が演じた。向井は、役作りのため事前に野際から、祖母がどういう人だったのか教えてと質問状が届いたことを告白。「写真を貸してほしい」と外見も似せようとしていたと言い、映像を見たときには「方言もよく(祖母が)言う言葉遣いで、ばあちゃんがいると思ってびっくりしました」と野際の役にかける思いに胸を熱くしたよう。「多くの人にこの作品を見ていただくことが、野際さんへの恩返しになる」と追悼した。

 撮影は昨年2月に行われたが、野際は撮影前に手術を受けており、同作で現場復帰。遺作映画となった。深川監督は「実は11月に、撮り直しをさせていただいて、『もう撮り直しはないわよね』と確認された」と明かし、「それが彼女の感じていたことなのか。立つ鳥後を濁さず、幕引きをしたかったのかな…。すごく強く、優しくて、凜(りん)とした昭和の女優さんが天に召された」と在りし日をしのんだ。

 会見の最後には、野際が亡くなる直前の5月に残した映画へのメッセージを披露。野際から「2度とあのような時代が来ないことを願います」という思いを聞いた向井は、「野際さんは(祖母たちと同じ時代を)経験している方なので、重みがある言葉。この映画は反戦映画じゃないけれど、二度と戦争がない国であり続けてほしい」と目を閉じた。

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