北朝鮮・会寧日帰りツアー開始も先行きは不透明

中国・吉林省延辺朝鮮族自治州の州都、延吉から出発し、北朝鮮・咸鏡北道(ハムギョンブクト)の会寧(フェリョン)に向かう日帰りツアーが17日からスタートした。しかし、先行きは不透明だ。現地の新聞、延辺日報と中国国内のデイリーNK情報筋が伝えた。

延辺日報によると、ツアーは延吉の東北亜バスターミナルを午前8時に出発し、龍井市三合鎮の税関を経て、国境を流れる豆満江を渡り会寧に到着する。現地出身で金正日総書記の母親、金正淑(キム・ジョンスク)氏の銅像、住居、金正淑革命史跡館、会寧学生少年宮殿で幼稚園児の公演を見て中国に戻る。費用は昼食込みで399元(約6520円)でお手頃価格だ。

募集を行っているのは延吉の東北亜国際旅行社だが、実質的にプロジェクトを進めたのは会寧市当局だろうと情報筋を見ている。

「制裁で貿易が行き詰まり外貨稼ぎのネタがないので、観光事業を再開しようとしているのだろう」(情報筋)

会寧日帰りツアーは以前も行われていた。延辺日報によると、以前のツアーは2014年5月27日にスタートし、初日には134人が参加した。費用は580元(約9480円)。龍井市政府と咸鏡北道観光局の合意に基づくものだ。

北朝鮮当局は「金正淑氏の故郷、地上の楽園の候補地」と宣伝する会寧の再整備事業を進め、中国人観光客向けにレストラン街を造成するなど受け入れ体制を整えたが、評判は芳しくなかったようだ。それ以降、現地の新聞は一切報じていないことから、人知れず中止になったものと思われる。

「3年前のツアーでは、金正淑氏の銅像と家を見て、レストランに直行した。観光地がないので酒でも飲ませて帰そうというのだろう。プロパガンダ施設しかないところに誰が行くのか」(情報筋)

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