「涙をこらえてた」―隻腕の少年捕手が始球式に登場、見事な技術に感動の声

隻腕の少年がメジャーリーグの始球式で捕手役を務め、殿堂入り投手のボールを受けたことが、米国で話題となっている。プレーを目のあたりにしたオリオールズの捕手は試合後に「涙をこらえていた」と胸中を吐露。グラブを巧みに使いこなす姿を絶賛したと、MLB公式サイトが伝えている。

幼少期に右手を切断した14歳のテリー君、鮮やかな送球技術は「何年もかけて完璧にした」

 隻腕の少年がメジャーリーグの始球式で捕手役を務め、殿堂入り投手のボールを受けたことが、米国で話題となっている。プレーを目のあたりにしたオリオールズの捕手は試合後に「涙をこらえていた」と胸中を吐露。グラブを巧みに使いこなす姿を絶賛したと、MLB公式サイトが伝えている。

 記事によると、14歳のルーク・テリー君は幼少期に右腕を切断。しかし、これまで捕手としてプレーを続けてきたという。そんなテリー君は21日(日本時間22日)のオリオールズ-インディアンス戦で始球式に登場。通算268勝(152敗)を誇る殿堂入り右腕のジム・パーマー氏のボールを受けた。そして、掴んだばかりの白球を上に投げると、グラブを外して同じ左手でそのボールをつかみ、送球動作に入った。この一連の動きに、オリオールズの本拠地オリオール・パーク・アット・カムデン・ヤーズは大歓声に包まれた。

 MLB公式サイトは、「オリオールズのケイレブ・ジョセフ捕手の目を引いたのは、ある見出しだった:『隻腕の捕手』。ジョセフはルーク・テリーのツイッター動画を何度も再生した」と紹介。シーズン序盤に動画を見ていたという捕手のジョセフがテリー君に「畏敬の念を抱いていた」として、試合後に絶賛したことを伝えている。

「彼を捕球し、空中にトスし、そしてグローブを外したんだ。流れるような動きだった。彼は何千回もやったんだと思う」

 実際に、テリー君は記事の中で、自身の送球動作について「昔はボールを捕ってからグローブを外し、地面に置いていたんです。それからボールを拾い上げていました。でも、それだと遅すぎるんです。ある日、裏庭であれこれやっていて、出来たんです…。何年もかけて完璧にしました」と明かしている。

「息子が同じような状況に直面したら、諦めないでほしい」

 ジョセフの心を動かしたのは、テリー君が同じ練習を数え切れないほど反復することによって、現在のようなスムーズな動きをできるようになったのだという事実。 そして、隻腕でも野球を続けているということだ。

「正直に言うと、涙をこらえていた。僕は今父親で、子どもは2歳なんだ。もし(息子が)同じような状況に直面したら、諦めないでほしい。ルークがそうであるように、息子も愛するものを追いかけてもらいたい」

 この日は、試合前の野球教室にも参加し、選手に指導を受けたというテリーくん。メジャーリーガーの心を揺さぶる“技術”、そして精神力が、そのプレーには凝縮されていた。

「野球教室で終わったわけではない。満面の笑みを浮かべ、彼は始球式で、殿堂入り選手であるオリオールズのジム・パーマーの球を受けた」

 MLB公式サイトは、最高の晴れ舞台となった始球式について、このように振り返っている。笑顔で殿堂入り投手のボールを受けるテリー君の動画は瞬く間に全米に広まり、称賛の声が集まっている。

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