【新社長】〈昭光通商・稲泉淳一氏〉信頼回復、早期復配目指す アルミ事業、昭和電工グループのシナジー追求

 昭和電工の中核商社である昭光通商の社長に3月30日付で就任した。昨年まで在籍した昭和電工では主に人事・アルミ畑を歩み、汎用アルミ事業の再構築を進めると同時に、高機能アルミ部材事業の拡大に力を注いできた。昭光通商に籍を移して半年が経過し、「商材や取引先が多く、経営管理の視点も、与信管理の重要性などメーカーに比べて優先順位が異なる」と話すが「お客様のニーズに最大限応えるという点ではメーカーも商社も変わりはない」と強調する。

昭光通商・稲泉社長

 昭光通商は15年に中国関連の取引で大きな損失を計上したが、今年は、子会社での資金循環取引が明らかになった。厳しい環境下での登板となるが「二度と不祥事を起こさない体制をつくりあげ、また、復配へのシナリオを明確にすることで、株主、取引先の信頼回復に取り組む。さらには、将来の事業ビジョンを明確にして、社員のモチベーションを引き上げる」と力強く語る。

 昭光通商は、20年3月に復配する再建計画を策定していたが、今回の問題で毀損した純資産をどれだけリカバリーできるかが復配時期を左右する。

 早期復配を達成するための一丁目一番地は〝既存事業の深耕〟だ。日本の素材メーカーは設備過剰状態から脱し、汎用材料から高機能材料にシフトしており、一部の汎用素材は供給不足が構造的問題になりつつある。当社は海外サプライヤーのネットワークを生かして、お客様が求めるものを機動的に提供して事業を拡大していく。10年後の事業を策定するプロジェクトを若手中心に立ち上げたが、新しい事業(商材)という視点だけでなく、ビジネスモデルを変革することで、付加価値を生むことを考えたい。

 金属セグメントに分類されるアルミ事業では、傘下の昭和電工アルミ販売とのシナジーを強め、事業の拡大を進めていく方針だ。

 小さいころから鉄道ファンで700両近い鉄道模型を収集している。乗るのも好きで「精いっぱい働き、昭光通商の再建が果たせたら、自分へのご褒美として、四季島などの豪華列車で旅行したい」と計画している。(遊佐 鉄平)

略歴

 稲泉 淳一氏(いないずみ・じゅんいち)1982年(昭57)神戸大学経営学部卒、昭和電工入社。91年本社人事部、2009年アルミニウム事業企画室長、13年アルミ機能部材事業部長、14年執行役員、17年1月昭光通商特別顧問を経て3月に社長就任。京都府出身、59歳。

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