西本東京製鉄社長、中国の鉄源価格決定メカニズム「地条鋼全廃で変化」 鉄スクラップは溶銑比安価に、輸出は「枝葉」

 東京製鉄の西本利一社長は中国での「地条鋼」生産停止の影響について「中国からの鉄スクラップ輸出は少量であり一時的な動き。全体観から言えば枝葉の現象だ。むしろ中国における鉄源価格の決定メカニズムが大きく変化した点に注目すべきだ」と、自らの視察体験を踏まえて語った。

 西本氏は5月末の中国視察で見聞した話として、最大手電炉メーカーの鉄源配合率が従来は溶銑80%、鉄スクラップ20%で「電極のない電気炉で転炉のように操業していた」と指摘。しかし、地条鋼の全廃決定後には鉄クラップ価格が下落したことを受け、鉄源配合率を鉄スクラップ70%、溶銑30%に逆転させ「電極を使った電炉操業に切り替えた。この劇的で柔軟な対応には非常に驚かされた」と述べた。

 柔軟な発想の原点には「経済合理性」があるとした上で、中国メーカーは鉄源に関して「溶銑と鉄スクラップを比べ、安い方を使うだけの合理的な考え方だ」とした。

 中国での地条鋼の生産規模は年5千万~8千万トンとされる。西本氏はこれまで中国の鉄スクラップ価格は地条鋼メーカーの高値買いによって「異常に高い価格水準にあった」との見方を示した。その上で、「地条鋼の全廃によって中国の鉄スクラップ価格は溶銑に比べて安価になる構図に変化した」とみる。

 西本氏は5月28日から6月1日まで中国を訪問した。主な目的は現地の最新ミルや市場の視察。中国政府が6月末までの地条鋼全廃を決め、中国産スクラップ輸出が始まるなど地条鋼がテーマに浮上し、現地でその影響についても視察した。

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