「山の神」柏原さんが「チーム力」伝授 川崎市消防局で講演

 箱根駅伝で活躍し「山の神」と呼ばれた元陸上選手の柏原竜二さん(27)が26、27の両日、川崎市消防局の人材育成研修で講演し、駅伝で発揮した「チーム力」を伝授した。東洋大学時代を振り返り、エースと主将を担った経験から、チームで助け合うことの大切さを語った。

 柏原さんは中学から陸上を始め、大学に入り、箱根駅伝では山上りの5区で4年連続区間賞を獲得し、3度の総合優勝に貢献した。卒業後は富士通陸上競技部で5年間活動し、今年3月にけがを理由に現役を引退。現在は同社総務部のスポーツ担当として勤務し、アメリカンフットボールの富士通フロンティアーズのマネジャーも務めている。

 講演では、大学時代のエピソードを紹介。1、2年で順調に成績を伸ばしたものの、3年目で不調になったことに触れ、「エースとして常に勝つことを求められ、結果を出しても目立つ故に皮肉を言われたりした。つらい時期が続き、しばらく走れなくなった」と振り返った。

 エースの不在でチームの成績も伸び悩む中、4年生で主将に就任。監督からは4年生が自分たちでチームを運営するように言われ、役割を分担した。「自分が嫌われ役だった分、副主将が部員をフォローしてくれた。役職がない同期も全体を客観的に見てくれた」。練習内容も一律ではなく、選手の特性に合わせた。

 その結果、チームの意識が変わった。大会で柏原さんが不調でも、他の選手が巻き返し、優勝に導いた。「今までと違い、エースに頼らなくなった。自分が勝負を決めてやろうという選手ばかりで、やっと肩の荷が下りた。うれしかった」。チームで勝ちたいという思いが強く芽生えた。4年時の箱根駅伝では4区から8区まで5人連続で区間賞を取り、2年ぶりの総合優勝を果たした。

 柏原さんは「4年間で一番楽しい駅伝だった。1人で走るスポーツだが、チーム力が高まるといつも以上の結果を生む」と語り、「そのためには自分の得意分野や苦手分野を把握し、協力を求めて助け合うことが大切」と力を込めた。

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