契約打ち切り“危機”から広島“最強助っ人”に 大砲エルドレッドを支えたもの

広島のエルドレッドが1日の中日戦で3打席連続本塁打を記録した。6月16日の丸に続く快挙に、ヒーローインタビューでは、石井打撃コーチに勧められたという全て日本語での回答で「キモチイイ、ハイ!」と周囲を笑わせた。

広島・エルドレッド【写真:荒川祐史】

前監督の野村氏が明かす当時の記憶、「ちょっとえこひいきをしていたかも」

 広島のエルドレッドが1日の中日戦で3打席連続本塁打を記録した。6月16日の丸に続く快挙に、ヒーローインタビューでは、石井打撃コーチに勧められたという全て日本語での回答で「キモチイイ、ハイ!」と周囲を笑わせた。

 3打席連続本塁打は、米国でマイナー時代に経験があるというエルドレッド。「1Aでプレーしていた時、自分の誕生日だったので、よく覚えているよ」と笑顔を見せた。

 その長打力を買われ、「三振は多くても、とにかく大きいのを打てる選手が欲しかった」という野村謙二郎前監督の要望で、12年のシーズン途中に広島に入団した。途中入団ながら、チーム2位の11本塁打を放ち、貧打に苦しんでいたチームで貴重な存在となった。翌13年には、開幕直後に死球で左手首を骨折して13本塁打に終わり、球団はその年限りで契約を打ち切る方針だったが、野村氏を中心とした現場の強い要望で残留。その期待に応え、14年は37本塁打で本塁打王に輝いた。

 野村氏は当時を振り返る。「彼とは積極的にコミュケーションを取るようにしていた。食事にも一緒に行っていたし、彼の奥さんの誕生日には、ケーキを買って自宅に行ったこともある。ちょっとえこひいきをしていたかと言われれば、そうかもしれないけど、それだけ大事な選手だった」。エルドレッドも当時、野村氏のアドバイスに感謝するコメントをしばしば口にしていた。

「タイトルや数字は、全てが終了してからついてくるもの」

 緒方監督が就任後の15、16年も19、21本塁打を記録し、一発で状況を変えられる打撃は存在感抜群だ。昨年オフには2年契約を結び、契約を満了すれば、ジム・ライトルが持つ球団の外国人所属年数の最長記録を更新することになる。

「3本も打つなんて、びっくりしたよ」という緒方監督は「日本に慣れて、いろいろな経験をして、今年は安定した成績を残している。存在は大きいよ」と信頼を寄せている。

 3連発で21本塁打はリーグトップに並び、打点もトップのロペスに3点差の57打点と、14年以来のタイトルも視野に入ってきた。昨年までの5年間で100 試合以上に出場したのは一度だけと、故障が多い選手でもあるが、1日の試合では4打席連続本塁打を逃した7回終了でベンチに下がった。守備固めの意味もあるが、シーズンの先を見据えた選手起用でもある。緒方監督は「体調面の問題があるので、そこは考えてながら起用している。これからもコンスタントに、甘い球を一発で仕留めてくれればいい。最後までしっかりやってもらいたいね」と期待する。

「タイトルや数字は、全てが終了してからついてくるものだと思っている。シーズン中は考えない。とにかくチームの勝利に貢献したい」というエルドレッドだが、個人タイトルがチームの連覇に導く大きな力になるはずだ。(大久保泰伸 / Yasunobu Okubo)

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