【JFEエンジの電力小売事業子会社、アーバンエナジーの戦略】〈小賀坂善久社長に聞く〉親会社の技術力生かし、再生エネを積極活用 地域の新電力支援も事業の柱に

 JFEエンジニアリングの100%子会社で電力小売事業を展開するアーバンエナジー(本社・神奈川県横浜市、社長・小賀坂善久氏)は、JFEエンジの事業の柱となる環境・エネルギー分野の事業戦略において重要な役割を果たしている。小賀坂社長に事業の現状と展望を聞いた。(村上 倫)

――会社の概要からお聞きしたい。

アーバンエナジー・小賀坂社長

 「当社は2013年12月に設立、翌年4月から事業を開始した。JFEエンジは廃棄物発電プラントの建設を手掛けてきたが、近年では施設の設計・建設および維持管理・運営を一括して発注するDBO方式での受注が増加している。そこで、プラント建設から電力小売までの一貫したサービスを提供しようということがきっかけとなった」

 「当初は廃棄物発電が基軸で、福山リサイクル発電(広島県福山市)から電力を調達したが、バイオマスなど再生可能エネルギーによる電源を増やし、現在では再生可能エネルギー比率が5~7割と高い割合を占める電源を有する新電力会社となっている。そのため、CO2排出係数は一般的な電力会社が0・5~0・6であるのに対し、当社は0・255(実排出係数)と業界トップクラスを実現している。これが評価され、イケア・ジャパンの国内全8施設に向け電力を供給している」

――人員や売上規模は。

 「人員は派遣社員を含め今年4月時点で23人。販売電力量は16年度5億2千キロワット時と前年の約3・7倍となっている。今年度は7億2千キロワット時を販売する計画だ。また、16年度末の契約電力量は27万キロワットで前年の約1・9倍、売上高は前年比約3・3倍となる130億円だった。今期は契約電力量32万キロワット、売上高190億円を目指していく」

――供給元となる発電施設の構成は。

 「廃棄物発電プラントのほか、国内8カ所の太陽光発電施設、28基の風力発電施設などJFEエンジが建設・運営にかかわる自社電源から安定的に電力を供給している。昨年稼働した三重県・津市のバイオマス発電所や愛知県豊橋市で立ち上がるバイオマス発電施設、横浜市でJR東日本グループとの協業により行われる食品リサイクル事業でも電力を買い取る予定だ。エネルギー・環境に関するJFEエンジのエンジニアリング力・技術力を総合的に活用しているという自負がある」

――電源の確保のための取り組みは。

 「JFEエンジが受注したDBO案件やFIT発電所から余剰電源を買い取っている。また、JFEエンジに限らず発電機能を有する産業廃棄物処理施設からの余剰電源買取も行っている。さらに、電力・ガス会社とのDSS(Daily Start and Stop)電源契約も締結し、平日昼のみの電源(=ミドル電源)を購入している。電源が足りなければ市場からの調達も行っている」

――事業の戦略は。

 「電源構成と電力を必要とする需要家のバランスが重要で、両輪で事業を展開している。電源を売りたい事業者は多いが、まずは電力の売り先を見つけることが先決だ。当社は家庭向けの低圧電力の供給は行っておらず、工場や高速道路、商業施設、自治体や大学の施設、ホテルなどへ電力を提供している。北陸、四国、沖縄エリア以外のすべての地域で電力小売りを展開している」

 「特徴的な向け先としてはイケアのほか、JFEエンジの鶴見製作所に電力供給を行っているほか、直近では横浜スタジアムにも供給を開始した。供給先の確保に向け、多様な業種と取引があるJFEエンジの調達本部と連携し営業展開を行っているほか、昨秋から社内紹介制度も実施し、実際に契約に至ったケースも出ている」

 「また、JFE環境やJFE商事、JFEテクノス、三井物産フォーサイトなど代理店にも営業をお願いしている。横浜の臨港パーク向けの電力供給はこの成果の一つだ。さらに、JFEグループではジェコスやJFE建材、JFE鋼板、JFE物流、JFE鋼管などの工場向けにも供給している」

 「直近では静岡県磐田市と共同でエネルギー供給事業を開始したが、地域新電力支援業務も事業の核の一つとなってくる。実際、具体的に話が進んでいる案件もある。2020年4月からは法的分離による発送電分離が実施されるが、これもビジネスチャンスと捉えている。ただ、あまり供給先を拡大して電源構成の中で再生可能エネルギーが減少すれば当社の特色が薄れる。JFEエンジの商品と一緒に展開する一つのツールが当社という位置付けだと思っている」

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