【日鉄住金物産の中期戦略】〈樋渡健治社長〉三井物産から事業譲り受け、「鉄鋼事業を補強・効率化」

――前期業績の総括から。連結経常利益309億円で、2013年10月の発足(旧2社の経営統合)以来の最高益更新に。

日鉄住金物産・樋渡社長

 「四つの事業部門の経常利益は、鉄鋼196億円、産機・インフラ22億円、繊維54億円、食糧33億円。繊維と食糧は現行中期計画(15~17年度)の目標数値を達成した。鉄鋼の利益も発足以来で見ると比較的高い水準で、まずまず。産機・インフラはタイの経済成長が鈍化したことでロジャナ工業団地の利益が低迷したこともあり減益だった」

――グループ会社の業績について。

 「全124社のうち黒字102社、赤字22社。鉄鋼事業では黒字が5社増の60社、赤字が3社減の13社だった。海外コイルセンターの黒字化などがグループ全体の増益要因となった。連結利益への利益貢献金額で見ると住金システム建築、NSMコイルセンター、イゲタサンライズパイプが高かった」

――今期も増益見通しで経常益330億円に。増益要因は?

 「ほとんどが鉄鋼事業の増益見込み分だ。前年度の上期は鋼材価格が低迷したが、前年度下期から上昇基調。今期は鋼材単価の値上がりが浸透してくるため、浸透差が増益要因となる」

 「取扱数量増も増益要因の一つ。前期は単独1379万トンだったが、今期は1400万トン超の見通し。アジア向け主体に海外向けで数量が増えそうだ」

――グループ会社の業績動向について。

 「オーストラリア現地法人の解散など、前期に手を打った効果も出てくる。赤字企業は設備の新規立ち上げに伴うものが大半。稼働率が上がるとともに黒字化に向かっていく。総じてプラス方向で堅調に推移している」

――事業投資・設備投資の金額は。

 「15年度58億円、16年度62億円だった。今年度は三井物産への事業譲渡に伴う対価の支払額によって、まだ流動的だ」

――今期は次期中期計画策定の年。事業ごとに問題意識やテーマを伺いたい。鉄鋼では三井物産からの事業譲渡(三井の出資を2割に拡大)を検討中。

 「譲渡を受ける対象事業範囲、譲り受け方法、対価を含む諸条件などにつき検討しており三井物産と協議中だ。国内市場が成熟する中で、どう効率的に仕事をしていくか。重なり合っているところを効率化し、当社の弱い分野を補強する。鉄鋼事業トータルとしての効率化と補強がポイントだ」

 「今年3月に日新製鋼が新日鉄住金の子会社になったが、鉄鋼メーカー(上流)の再編統合・整流化が進んでいる。それを受けて鉄鋼流通業界も再編統合を含む変化について常に意識しておくことが必要。メーカーとユーザーをつなぐ鉄鋼バリューチェーンを担っている当社が、この提携を通じて競争力を一段と強化することが大きな狙いだ」

旧2社統合効果、年30億円超へ/グループ企業の再編統合効果も

――日鉄住金物産と三井物産を合わせると、新日鉄住金材の取り扱いでは最大のシェアを占める一大勢力に。改めて提携の相手はなぜ三井物産なのですか?

 「旧日鉄商事へは三井が20%強を出資していた。国内コイルセンター事業もNSM社に統合してシナジーを上げてきた。そうした長い間の取り組みの中で信頼関係が生まれた。歴史的な経緯に加え、総合力や相乗効果を最大限発揮しやすい組み合わせだと考えた」

――統合3年がたちましたが旧2社(日鉄商事・住金物産)の統合効果はどれほど出ていますか?

 「統合の時点では当初3年間で20億円と言っていたが、前期までで24億円。今期で30億円超に達する見込みだ。コスト面ではシステム統合や事務所統合。営業面では日鉄商事が強かった電炉材の取り扱い、住金物産が強かった鉄スクラップや商社鉄骨などのシナジー効果が出ている。グループ会社の再編統合も効いてくる」

 「コイルセンターではNSMコイルセンターとエスエスシー北関東を合併。NSSBコイルセンターの中山製鋼所構内への移転も決めた。建設土木分野では、NSSB建材と富岳物産を合併して7月1日に新会社のNS建材販売を発足させた」

 「コイルセンターの再編統合は、関東地区では一段落。関西地区は近隣に加工拠点があり一段の効率化が検討課題だ」

――鉄鋼事業以外の成長戦略について。

 「繊維は一貫管理を強化し、ロス率を減らすことで利益拡大が図れている。この先はOEMからODMへ、つまりD(デザイン)を組み込んだ形で提案営業を強化し、ODM比率をさらに上げていくことが重要だ」

 「食糧は、ニーズに合った仕入れと在庫をミニマイズすることが収益に結び付いてくるが、うまくマネージできている。国内市場が成熟する中で海外市場開拓がテーマになる」

 「産機・インフラは工業団地などいろいろな事業を抱えている。世界シェア15%を狙っているヘッドレストステイなど自動車部品やアルミなどが伸びそうで、自動車関連について今後も注力していく」

――今後の重点地域については?

 「海外地域別売上げはアジア(中国除く)が65%、中国が18%。アセアンと米州(アメリカとメキシコ)に力を入れていくことになる」

(一柳 朋紀)

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