海外ホットコイル市況、先高観強まる=500ドル台回復へ

 熱延コイルの海外市況で急速に先高観が強まっている。中国市場の一段高を受け、海外市況の底値を形成してきた中国ミルによる輸出向けのオファー価格も上昇。9月積み商談では3~4月以来となるトン当たり500ドル超えの決着が濃厚になってきた。秋需の到来や自動車向けの需要増で、下期の海外薄板市況は強基調が続きそうだ。

 中国では「地条鋼」排除による薄板向けの鉄源タイト化や構造調整の進展期待といった思惑も加わり、ここ2カ月間でホット市況は約500元(8千円強)値上がりした。一時はやや失速感があった民族系の自動車向け販売も回復しており、近く打ち出される宝山鋼鉄などの8月国内販価も値上げが確実視されている。

中国内のホット価格はドル換算で500ドルに達しており、400ドル台半ばだった輸出向けの価格は相対的に割安感が強まっていた。先週にはホット輸出の有力サプライヤーである中国民営鉄鋼大手の日照鋼鉄がインドや中東向けの9月積み商談でCIF500ドル台前半を提示。成約はしていないものの大幅な値上げに動き出している。

 ホット市況の上昇に連動し、半製品・スラブでもロシア勢が数十ドル値上げ。420~430ドルをオファーしており、価格底上げが進みそうな状況だ。

 海外市場の雰囲気が変わってきたのは中国要因に加え、需給面での裏付けもある。中東市場のラマダンが明けたことや、各地で秋需を見据えた買い付けが出始めたことで需要の最悪期は脱しつつある。中国では自動車減税の縮小を前に下期にかけて再び駆け込み需要が出てきそうだ。

 供給面では新日鉄住金やJFEスチールに依然として輸出向けの余力がなく、韓国・ポスコは10~11月に光陽製鉄所第3熱延ミルの改修を、台湾・中国鋼鉄(CSC)は高雄製鉄所で10月から第3高炉の改修を控えている。需給のタイト感は当面継続する可能性が高い。

 日本の高炉メーカーはホット輸出商談の決着を可能な限り先延ばしし、海外ホット市況の底値切り上げを見極めた上でより高値で成約を図っていく考え。

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