プロ2年目にして漂う大砲の風格 オリックス吉田正の2017年シーズンが開幕

7月9日、オリックスの若き大砲候補・吉田正尚外野手が、満を持して今シーズン初の1軍昇格を果たし、初出場となった試合でこれ以上ない結果を残した。

オリックス・吉田正尚【写真:荒川祐史】

今季初出場で決勝打放つ活躍、オリックスは4-0で快勝

 7月9日、オリックスの若き大砲候補・吉田正尚外野手が、満を持して今シーズン初の1軍昇格を果たし、初出場となった試合でこれ以上ない結果を残した。

 チームが4連敗を喫している中、本拠地で迎えた千葉ロッテとのカード3戦目。3番・指名打者としてスタメン入りすると、0-0で迎えた3回裏、2死満塁の絶好機。千葉ロッテの石川の4球目の直球を鋭く振り抜いて中前に運び、試合の均衡を破る2点先制適時打を放つ。結果的にこれが決勝点となり、試合は4-0でオリックスが快勝を飾った。

 昨シーズン、芸術的かつ豪快なフルスイングで、オリックスファンのみならず数多くのプロ野球ファンを魅了した吉田正。プロ2年目の若者とはいえ、逸材であることは間違いなく、待ち望まれていた1軍昇格ではあった。しかし、復帰戦ですぐさま今日のような結果を残すのは容易ではなく、その不安を覆して結果を出したことからもその器の大きさは計り知れない。

 吉田正は敦賀気比高校、青山学院大学を経て、2015年のドラフトでオリックスから1位指名を受けた23歳。ルーキーイヤーだった昨シーズン、怪我に見舞われながらも開幕1軍の切符をつかみ、初出場試合で早速マルチ安打を放つと、ドラフト制開始後最長タイとなる開幕からの6試合連続安打を記録。華々しいデビューを飾るも、4月下旬に腰椎の椎間板症により出場選手登録を抹消されてしまう。

 離脱から約4カ月後の8月にようやく1軍復帰を果たすと、計63試合という出場試合数ながら231打数67安打34打点、打率.290という好成績を残す。持ち味のフルスイングで描いたアーチは10本を数え、パ・リーグの新人選手が1軍公式戦で2桁本塁打に到達するのは、2003年に西武の後藤(現横浜DeNA)が記録して以来となる13年ぶりの快挙だった。

吉田正復帰でさらに厚みを増すオリックス打線

 シーズン終了後の12月に台湾で行われた「2016アジアウインターベースボールリーグ」では、NPBウエスタン選抜の一員として全18試合に出場し、有望な若手選手の中にあっても圧倒的な存在感を見せ付ける。打率.556、30安打、6本塁打、29打点、57塁打の5冠を独占するという異次元の活躍。NPBウエスタン選抜チームをリーグ優勝に導き、最優秀打者にも選出された。

 このように、ルーキーイヤーからシーズンオフにかけて非凡な才能を発揮してきただけに、今季の吉田正には、阪神に移籍した糸井の穴を埋める活躍が期待されていた。しかし、オープン戦の終盤で腰痛が再発。開幕1軍入りを逃し、戦線離脱を余儀なくされる。患部の状態はなかなか回復せず一進一退の状況が続いたが、慎重に調整を進め、シーズンの折り返しも間近に迫った7月9日、本拠地で1軍復帰戦を迎えるに至った。

 吉田正の武器は、なんといっても、全身をフル活用して繰り出されるフルスイング。野球選手としては小柄な体格だが、思い切りの良さと強靭な下半身で本塁打を量産してきた。昨シーズンのオープン戦で、京セラドーム大阪の3階席の壁に直撃する一発を放つなど、その本塁打は打球速度も飛距離も規格外だ。一流投手の球を豪快なフルスイングで仕留め、表情を変えることなく打球の行方を見送る姿には、すでに大砲の風格すら漂う。

 現在、オリックスはリーグ4位。3位の埼玉西武とは6ゲーム差が開いている。5月は雨天中止を挟んで9連敗を喫し、5位転落も経験したものの、マレーロの加入やロメロの復帰などにより、「日本生命セ・パ交流戦」では6連勝を果たした。ここに吉田正の復活が加われば、オリックス打線の厚みは確実に増すだろう。

 球宴が終わると、長いシーズンの後半戦に突入する。目標だった「143試合出場」は叶わなかったが、若き大砲候補が描く美しいアーチに、否応なく期待が膨らむ。「パ・リーグ インサイト」馬塲呉葉

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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