JFEのフィリピン子会社「PSC」操業40周年 焼結鉱生産に特化、「立地」「技術」で競争力

 JFEスチールの子会社で、フィリピンで焼結鉱の生産を手がけるフィリピン・シンター・コーポレーション(PSC、本社・マニラ)が今年、操業開始40周年を迎えた。PSCは、オーストラリアやブラジルから運ばれてくる鉄鉱石を焼結鉱に加工し、JFEの日本国内の製鉄所に供給する「鉄鉱石の中継基地」。焼結鉱生産に特化するという世界でも珍しい業態ながら、立地の良さと技術力の高さで、JFEの鉄鋼生産を40年にわたり支えてきた。

 PSCは、旧川崎製鉄の出資で74年8月に設立。3年後の77年4月に焼結鉱生産を開始した。JFEスチール発足後も年間400万~500万トンの焼結鉱を生産。東西の両製鉄所へ供給を続けてきた。累計生産量はすでに1億5千万トンを突破している。

 世界でも珍しい焼結鉱専門工場がフィリピンに誕生するきっかけとなったのは、旧川鉄・千葉製鉄所(現東日本製鉄所・千葉地区)の増強計画。川鉄は70年代に新高炉の建設を計画したが、土地の制約などから焼結機の新増設を断念。代わりに海外での立地を検討した。白羽の矢が立ったのが、オーストラリア、ブラジルからの鉄鉱石輸送ルートに位置するフィリピンだった。

 フィリピンはもともと鉄鉱石の有力な供給国。川鉄は50年代から輸入を始め、60年代には鉄鉱石を焼き固める「鉄鉱石ペレット」工場の運営にも参画した。川鉄とフィリピンとの関係もPSC設立を後押しした。

 中継地でいったん鉄鉱石を荷揚げし、焼結鉱に加工するという業態は通常ならコスト高を招きかねない。それでもPSCが競争力を維持・強化してこれたのは「立地」と「技術力」に秀でていたからだ。

 PSCの工場が立地するミンダナオ島は焼結鉱製造に欠かせない石灰石が豊富。さらに23・5メートルという喫水も有利に働いた。港湾インフラはその後、十二分に威力を発揮。04年には30万トン級船、12年には40万トン級が初入港している。

 一方「技術」は、高い生産性に加え、焼結鉱の品質に貢献してきた。焼結鉱は粉化しやすく、一般的には輸送に向かない。JFEはPSCでの操業を通じて、粉化しにくい焼結鉱の開発を追求。鉄鉱石の配合を工夫するなどして粉化しにくい高強度焼結鉱の開発・実用化に成功した。こうした挑戦がPSCの競争力の高さにつながっている。

 40年にわたり、旧川鉄、JFEの操業を支えてきたPSC。設備老朽化への対応など新たな課題も出ているが、『50年』に向けた一歩を踏み出したところだ。

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