【トップインタビュー 淀川製鋼所・河本隆明社長】「経常益100億円を安定確保」、高耐久GLカラーを拡販

――前3月期決算は経常利益が137億円。前期比63%増の大幅増益となりました。

 「国内の鋼板関連は、ヒモ付きの価格是正に時間がかかったものの、店売りは地域密着営業による販売量の増加および価格是正に努めた結果、増益となった。また、海外事業の黒字化や収益の改善が実ったことも増益の要因だ」

淀川製鋼所・河本社長

 「しかし、この好調が全て継続して今期につながるとは考えていない。気を引き締めて臨む」

――海外事業の現状と課題は。

 「台湾のSYSCO社は、米国のアンチダンピング(AD)の影響で輸出量は落ちたが、台湾国内でのブランド力を生かした販売強化により大きく増益。今年1~3月はまずまずだが、4月以降は海外市況の影響もあり、国内外ともに引き合いは前年同時期より厳しい状況だ」

 「タイのPPT社は通期で黒字化を達成。課題は環境の変化に対応しつつ安定的に利益を計上することだ。特にタイ国外からのめっき鋼板の調達は、ADや関税の兼ね合いでコスト増が見込まれる。合理化を進めながら利益の出る仕組みを構築する」

 「中国のYSS社は、販売数量・損益ともに改善したが、黒字化には至っていない。めっきライン1本とカラーラインが2本あり、足元は稼働に余裕がある状況だ。課題は販路。子会社の建材商品製造・販売会社であるYBMH社やコイルセンターのSSCO社など、関係会社の横のつながりを生かして販売ルートを広げていく方針だ」

 「海外事業は選択と集中が重要。企業価値を高めるため、連携を強化しながら、必要に応じスリム化も図る」

――社外に向けて初となる長期ビジョンおよび3カ年(2017~19年)中期経営計画を発表しました。

 「長期ビジョン『桜(SAKURA)100』は、100年企業を目指し、掲げた。ステークホルダーである株主の皆様・顧客・取引先・社員・地域社会にとって安定して存在することが企業としての最低限の貢献だ。長期的存続のためには強靭な経営基盤が必要となる」

 「そのためにも、中期経営計画では市況や為替などの事業環境に左右されず連結経常利益100億円を安定して計上、長期ビジョンでは営業利益100億円を安定して計上できる100年企業を目指す。現在は全セグメント黒字で、売上高営業利益率8%以上を達成しているが、さらなる高みを目指し、安定的に毎年達成できるように営業や開発などの組織を強化する」

――中期経営計画の1年目である今期の状況と今後について。

 「鋼板関連の実需は底堅いが、勢いはそれほどない。店売りは一定量のシェアがあり価格是正は進んでいるが、ヒモ付きは少し遅れており、価格是正は思い通りに進んでいない」

 「今年1月に販売開始した『ヨドHyperGLカラー』シリーズは、耐久性や加工性などユーザーから好評を頂いている。今後も販売量の増加が予想されるため、安定した生産体制ときめ細かな対応を心掛ける。また、当社は比較的薄物が得意。技術力の一層の向上を図りながら付加価値の高い薄物の絶対数量を伸ばす。加えて、数量のベースとなる厚物もしっかりとシェアを確保していく」

 「3月からはヨド耐火パネルグランウォールの新生産ラインが姫路事業所(兵庫県姫路市)で稼働を開始し、足元は堅調に推移している。販売目標は福島工場と合わせて年間30万平方メートル。現在、受注は増えてきており、下期は今以上に堅調に推移するだろう。また、耐火パネルの受注増は、省エネに優れる断熱パネルなどの販売量の押し上げにもつながると考えている」

 「エクステリア関連の値上げに関しては、特に物置は同業他社だけでなくホームセンターのプライベート商品などもあり、値上げは非常に難しい。コストを下げることを徹底し、販売量を増やしていく。そのためにも、好調な中・大型物置の拡販に努めながら、倉庫などの大型商品なども地域密着型の営業で需要を捕捉する。また、東京五輪関連も期待している」

 「ロール事業は、鉄鋼用は底堅く推移しているが、製紙用は新規顧客や既存顧客の設備投資が減少傾向。しかし、当社の蓄積した技術により、樹脂関連など新規市場も視野に入れており、一部では成果も出始めている」

――100年企業を目指し、経営基盤を強化すると。

 「全ての事業に総じていえることだが、既存顧客を一層大切にしながら、グループ一丸となって時代のニーズや工法に合った商品を開発し、新規顧客の獲得と新規市場の開拓を目指す」(綾部 翔悟)

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