【新社長】〈神鋼メタルプロダクツ・安藤裕幸氏〉需要掘り起こしに重点 顧客基盤拡大・新製品に注力

 神戸製鋼所でアルミ板を生産する真岡製造所の製造部長から北九州市にあるグループ会社神鋼メタルプロダクツに転じ、6月に社長就任。「今年で100年を数えるアルミ・銅事業部門発祥の地で社長を務めることに重責を感じている。先輩や仲間がつないできた思いを大切に事業運営に当たりたい」と抱負を語る。

神鋼プロダクツ・安藤社長

 これまで板や押出材などアルミ圧延品の製造畑を中心に歩んできた。若手時代には真岡で圧延の潤滑や冷却に使う油の開発を担当。工場に泊まり込んで実機への適用を進め、業界に先駆けた新たな圧延油は神戸製鋼の競争力を高めた。「仲間と共に課題を乗り越えた経験は今でも思い出す」という。管理職としては真岡の熱延室長としてボトルネック解消に取り組んだことが印象深い。一人ひとりの力を信じ、最大限能力を発揮できるよう「今の仕事が顧客の役に立っていることを丁寧に説明した」と振り返る。併せて一緒に汗をかく背中を見せ現場の士気を高めた。

 社長を務める神鋼メタルプロダクツは銅合金管や連続鋳造機のキー部品であるモールド、異種金属を組み合わせた複合加工品など多彩な製品を手掛ける。今後を見据え「既存顧客を逃がさないだけでなく、需要の主体的な堀り起こしも重要」と表情を引き締める。

 銅合金管では減少している中東向けの造水関連ビジネスをいま一度精査。造水技術の変化やアジア勢との競争激化など原因を検証し、海外勢の台頭があった場合には信頼性を武器に改めて需要の取り込みを図る考え。造船関連では「韓国で顧客基盤を広げるなど拡販の可能性を探っていきたい」という。

 国内で圧倒的シェアを誇るモールドでは「オーダースーツを仕立てるような細やかな対応力を生かしたい」と話す。海外では高品位が求められる市場に照準を合わせる方針。

 複合加工品は全方向から均等加圧する静水圧押出機を有することが特徴。特殊な設備で造られる新製品で、さまざまな需要を捕捉する。「非常にユニークな技術があるのでシーズを積極的にニーズに結び付けたい」と今後の成長に期待する。

 趣味はゴルフとベンチプレス。モットーは「人を見る目、深く鋭くそして温かならんことを」。(古瀬 唯)

略歴

 安藤 裕幸氏(あんどう・ひろゆき)1990年(平2)早稲田大院修了、神戸製鋼所入社。アルミ板の製造部門が長く真岡製造所では製造の責任者を務めた。またアルミ押出材の工場長や、アルミ・銅関連の設備投資や技術開発を取りまとめる技術企画室長も経験。53歳。

© 株式会社鉄鋼新聞社