命の尊さ歌に込め 横浜で障害者らアピール

 津久井やまゆり園(相模原市緑区)での障害者殺傷事件から26日で丸1年。障害がある女性がボーカルを務める3人組音楽バンド「歩笑夢(ぽえむ)」が17日、失われた19人の命の尊さを歌詞に込めた自作の歌を横浜市中区のJR桜木町駅前で披露した。やまゆり園の再建方針に反対する障害者らの集会での一幕。集会では事件を風化させず、自立した暮らしを勝ち取ろうと声を上げた。

 「僕らをどうして不幸せと、勝手に決めるのか/僕らの軌跡(あしあと)消さないでよ/19のかがやき/19の強さ/みつめてよ」 歌は「19の軌跡(きせき)」。爽やかな歌声を響かせたのは、難病の脊髄性筋萎縮症のため車いすで暮らす見形(みかた)信子さん(48)=さいたま市。事件に衝撃を受け、「社会に要らない命なんてない」との思いから作詞。バンド仲間の中学教諭新島茂男さん(58)が曲を付けた。

 「僕らがなんにもできないなんて、なんで決めるのさ」。軽快な曲に、行き交う人たちも次第に足を止め、人の輪から大きな拍手が湧き起こった。

 この日の集会は障害者や支援者ら約50人が参加。脳性まひ者の立場から社会の偏見や差別をなくし、地域の中で暮らすことを目指す「一歩の会」が主催した。

 代表の横山晃久さん(62)は「隔離収容施設であるやまゆり園が再建されると、障害者の社会参加の大きな壁になる。自分の意に反して障害者が入れられることが確実に起きる」と訴えた。

 マイクを握った会員の篠原由美さん(54)は声を震わせた。「障害者がいなくなればいいという被告の言葉に、不安や恐怖などいろいろな思いがあった。殺害された19人の名前も公表されず、すごく憤りを感じている」。その上で、「(被告のような)根深い優生思想と闘い、地域で一人一人が思い描く生活ができる社会をみんなで実現しよう」と決意を述べた。

 「見形さんの歌に勇気をもらった」。NPO法人県障害者自立生活支援センター(厚木市)の鈴木治郎理事長(62)は「『ともに生きる』とは障害者との共生であり隔離ではない」と憤る。「この歌のように、行政をはじめ、いろんな人との対話で気付きにつなげたい」と話した。

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