<隠れた名盤> つるの剛士『君にありがとう』 これまでの日々に感謝を込めるように歌う

つるの剛士『君にありがとう』

 通算6作目となるシングル。その飾らない性格から、家族思いという印象のある彼だからこそいっそう胸に響く。

 NHKラジオ『深夜便のうた』にも起用された表題曲は、都倉俊一が作詞・作曲・編曲を手がけたバラード。出逢いから、二人で歩んだ道のり、不安や後悔の日々など一つ一つに対し、感謝を込めるように歌われている。少しハスキーな声が、家族の歴史や人生の秋を感じさせ、しんみり聴く人も多いことだろう。

 カップリングの『うたのちから』は、絵本作家でもある新沢としひこ、中川ひろたか、さらに演奏家の中村圭作とつるの本人が合作した子どもも楽しめそうなポップなナンバー。繰り返される「うたのちから きっときっとある いまここに」というフレーズから、どんな世代でも夢や未来を信じられそうだ。

 実際に歌を贈りたい人向けなのか、『君にありがとう』のピアノ伴奏も収録。本作を聴けば、言葉とは、日頃の行いを通した意味で伝わるものだなあと実感するはず。

(ポニーキャニオン・1204円+税)=臼井孝

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