佐藤正午さんに直木賞

 第157回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が19日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、直木賞に佐世保市在住の佐藤正午さん(61)の「月の満ち欠け」(岩波書店)が選ばれた。本県関係の直木賞受賞者は、第36回の穂積驚(ほづみみはる)さん、第97回の白石一郎さん=いずれも故人=に次いで30年ぶり、3人目。

 芥川賞は、沼田真佑さん(38)の「影裏(えいり)」(文学界5月号)に決まった。

 佐藤さんは1955年、佐世保市生まれ。佐世保北高卒。北海道大文学部中退後、古里佐世保に戻り小説を執筆。諫早に根差した作家、野呂邦暢さんらの影響を受けた。83年に「永遠の1/2」で第7回すばる文学賞を受け、デビュー。ベストセラーとなった「ジャンプ」「Y」をはじめ、「5」「身の上話」「小説家の四季」など多数の著書がある。2015年「鳩の撃退法」で第6回山田風太郎賞を受賞した。

 受賞作は生まれ変わりを題材に、時空を超えた男女の究極の愛を描いた。「あたしは、月のように死んで、生まれ変わる-」。女性の深い愛が切ない。選考委員の北方謙三さんは、「三十数年のキャリアを積みながら、文章がみずみずしさを失っていない。文章の力が抜きんでている」と話した。

 佐藤さんは佐世保市内で受賞の知らせを受けた。「編集者に恵まれ、マイペースで書いてこられた。60歳を過ぎているので、変わりようがなく、これまで通り書いていくと思う。今まで出合わなかった直木賞に呼び止められて、『今?』という感じがした」と喜びを語った。

 贈呈式は8月下旬に東京都内のホテルで開かれる。賞金は各100万円。

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