【新社長インタビュー】〈中山製鋼所・箱守一昭氏〉「中山らしさ」追求、地場立脚、顧客重視 2年後の「100周年」に向け体質強化

――抱負を聞かせてください。

中山製鋼所・箱守社長

 「銀行、新日鉄住金、商社など多くの方々のご支援を得ながら昨年3月に会社再生を3年間で完了し、しかもこの4年間は経常増益となった。固定費低減など軽い体質になって収益確保ができたが、社員がしっかり動いてくれた。森田俊一前社長はコミュニケーション重視で企業体質を変革してきた。一方で営業面では、古くからのお客様が根強い信頼感を持ち続けていただき、応援・後押ししていただいた。こうした中山の地場に立脚して顧客重視で営業展開していく。お客様に望まれる形でのサービス向上を図っていきたい。幸い、中山グループには強くて特長ある会社が多い。現中期経営計画でも提示している『中山らしさを活かした中山らしい営業』をグループ全体で推進していく」

 「それと、会社再生に伴い従業員には処遇面など苦しい状況を強いてきたが、収益をもっと上げて格差を是正していきたい」

――中期計画は2年目になる。

 「前3月期(2016年度)の連結業績は経常利益60億円、自己資本比率62・5%、ROE8・4%。中計での18年度連結財務目標の経常利益60億円、自己資本比率62%、ROE7%を計画1年目で達成したが、引き続き気を引き締めて、同じ目標をしっかり確保できるよう2年目、3年目も当初打ち立てた施策をローリングしながら実行していく」

――次期中期計画に向けては。

 「当社は1919年(大正8年)に中山悦治が兵庫県尼崎で創業し、2年後の2019年に『創業100周年』を迎える。その19年度が次期中期経営計画スタートの年になる。そこに向けて今期以降、グループ全体の底上げを図り、この間控えてきた設備投資も必要なところはきちんとやって強い体質づくりを進めたい。また海外展開も、足元で縞コイル等の輸出に取り組んでおり、今後も検討していきたい」

 「当社は自前の鉄源として電炉鋼生産があり、熱延系鋼板や棒線など『つくる力』がある。またグループを含めて『加工』も強みを持っている。これら下工程を活かしていくことが大事だ。現在、次期中期に向けた骨格議論を始めている」

――自社生産による電炉鋼が製品の約30%。鉄源問題は課題だが。

 「02年に高炉を止めて以来、鉄源問題は当社の重要課題だが、次期中期でもこの問題を大きな課題として考えていきたい。ただ、高炉原料の市況変動などを考えると、足元ではまだ厳しいが、電炉の競争力が増すことも予想される。現在、月9万トンの熱延コイル生産のうち3万5千~4万トンが自前の電炉鋼。残りはスラブを外部調達している。また月2万~3万トンの棒線もビレットを全量外部調達している。電炉鋼はフル生産状態なので、今後も購入鉄源であるスラブやビレットの適正価格での安定調達が、次期中期の課題だ」(小林 利雄)

プロフィール

転炉など製鋼部門が長い。高炉休止後は生産技術全般を担当。2000年の新熱延ミル立ち上げや新日鉄(現新日鉄住金)との棒線アライアンスに関わるなど中山・生産技術の中枢を歩んできた。「拙補勤以」「流汗悟道」が座右銘。中学から卓球部で大学では副主将。休日は山歩きや家庭菜園で息抜き。

 箱守 一昭氏(はこもり・かずあき)80年(昭55)東大院金属材料学修了、中山製鋼所入社。製鋼、棒線圧延、商品開発、熱延など経て99年第二圧延部長(新熱延)、02年生産技術圧延総括部長、03年生産技術部長、05年取締役生産技術部長兼事業戦略担当、06年同生産戦略PTリーダー兼事業戦略担当などから11年同営業本部長兼商品開発担当、13年専務、17年6月社長。53年(昭28)2月生まれ、64歳。東京都出身。

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