南ア共和国のホット・厚板セーフガード、WTOへ「発動」通告も自国で最終決定せず

 南アフリカ共和国が輸入品の熱延コイルや厚板に対し行っているセーフガード(SG)調査の最終結果が判然とせず、煮え切らない状況が続いている。同国政府は4月にWTO(世界貿易機関)へSG発動を通告したが、自国機関の南アフリカ国際貿易管理委員会(ITAC)は20日現在まで最終決定を告示していない。日本からの現地リローラー向けホットや鉱山向け耐摩耗厚板輸出も慎重に進めることを余儀なくされている。

 南ア政府は4月に行ったWTOへの通報で、7月7日から3年間にわたり最大12%のSG税を課すとしていた。このため今月上旬にはITACが最終決定を下すとみられていたが、いまだ音沙汰がなく現状ではSGの発動に至っていないものと予想される。

 WTOへの通報を行っても、一般的に自国機関で告示が行われなければ有効とみなされない。またWTOへ通報がなされても、必ずしも発動しなければならないわけではない。

 「ITACの最終決定前に現地で行うとされていた公聴会の日取りも決まっていない」(商社幹部)とされ、国際的に批判が強いSGの実施に南ア政府が逡巡している可能性も指摘される。ただ南ア政府の真意や実際の運用が不透明で、実際に輸出してみなければ分からない面もあるという。

 日本からの南ア向けホット・厚板輸出は合金鋼を含め年間十数万トン。近年は資源安で南ア経済が振るわず伸び悩んでいるが、新日鉄住金と伊藤忠丸紅鉄鋼が出資するサファール・スチールをはじめ長期的な取引関係があり、SG発動による影響が懸念されていた。

© 株式会社鉄鋼新聞社