金属行人(7月21日付)

 鋼材加工業界の若手経営者・幹部社員団体が催した東北震災被災地視察に同行し、宮城県から岩手県にかけての数カ所を訪問した(6面参照)▼筆者は個人的にも毎年必ず足を運ぶし、同会でも3年ごとに現地視察している。6年4カ月という期間は、復旧から復興へと着実に歩を前に進めているのだろうが、それがはた目にも確信できる情景もあればそうも言えない印象を抱く景色もあり、改めてその場所やそこで暮らす人々にとって時間の経過が必ずしも一緒ではないことを思い知る▼復興を急ぐ工事現場では、基礎資材である各種鋼材がその使命を果たしていることに誇りを感じるとともに、九州をはじめ自然の猛威によってライフラインが寸断されるなどの被害で苦しむ地域でも、復旧・復興資材としての「鉄の活躍」を願わずにはいられない▼今回、岩手の釜石では「鉄の歴史館」と「橋野鉄鉱山」に初めて足を運び、近代製鉄の父・大島高任の偉業に触れた▼歴史館の一角に、役者が扮する大島高任が、戦の道具に使うための鉄づくりを嫌気する作業者に対し、良質な鉄をつくる本意について「社会に役立て、人々の暮らしを豊かにしたいんだ」と説くコーナーがある。これこそ現代にも連綿と続く「鉄づくりの源流」だと思う。

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